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世界で需要のない日本人ドライバー

 

Katsumasa Chiyo and Nissan GT-R GT3 won the 2015 Bathurst 12 Hours

Katsumasa Chiyo and Nissan GT-R GT3 won the 2015 Bathurst 12 Hour race (Photo:SOFTPEDIA NEWS)

 

「国際(的)レース」というと、F1やWRCなどの世界選手権を思い浮かべるかもしれませんが、必ずしもそれらだけに限りません。ル・マンをはじめ、ニュル、スパ、デイトナ、セブリング、バザースト、それにダカールラリーといった世界的に有名な年に1度の耐久レース(今年からは鈴鹿10Hもここに加わるでしょう)はもちろん、参加ドライバーの半数以上が自国出身者以外で占められているインディやDTM、それにブランパンのような複数国で開催されるシリーズも、国際レースとして括れるでしょう。

ではこれらのレースに日本人ドライバーは何人参加しているでしょうか? 残念ながらゼロか片手で数えるほどしかいません。

 

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経験値はスペシャリストに優る

 

Marcus Armstrong leads Verschoor and Shwartzman

Marcus Armstrong leads Richard Verschoor, and Robert Shwartzman at round one of the 2018 Toyota Racing Series (Photo:Driven by Matthew Hansen)

今年もこの時期恒例のToyota Racing Series (TRS) が開催されています(デイトナ24Hではないのね^^;) TRSは”真夏”のニュージーランドで行われるジュニア・シングルシーターシリーズ。5ラウンド全15戦を5週連続で行う短期決戦です。シャシーはFIA F3の安全基準に則ったタトゥースFT50。エンジンはトヨタのプロダクションモデル2ZZ-GEをレース仕様に改良したもので約200馬力を発生。燃料にはE85バイオエタノールが使用されています。ギアはSadev製6速パドルシフト、タイヤはミシュランのワンメイクで、性能的には概ねFルノー以上、現行F3未満と考えると良いでしょうか。

ちなみにシリーズ中の1戦にはニュージーランド・グランプリの冠が付されていますが、FIAからF1以外で”グランプリ”の承認を受けているのはマカオGPとこのニュージーランドGPのみです。

 

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ココがヘンだよ、ニッポンの育成プログラム(2)

約20年前に国内の自動車メーカーがそれぞれ育成プログラムを始めましたが、その目的は国際舞台で通用・活躍できるドライバーの育成だったはず。しかし実際に目的を達成したと言えるのは、佐藤琢磨、中嶋一貴、小林可夢偉の3人のみでしょう。他には短期間、松浦孝亮や武藤英紀がインディに参戦した程度。国際レースにもいろいろありますが、いわゆる”トップカテゴリー”でそれなりに活躍した日本人ドライバーというと、残念ながら彼らくらいしか思いつきません。約20年もやってきてのこの結果は、成功と言えるのでしょうか?

例えばイギリス人やフランス人、ブラジル人などは世界中の様々なカテゴリーで活躍していますが、F1はもちろんDTM、WTCC、GTEプロ、WRXなどで活躍している日本人ドライバーを、ぼくは寡聞にして知りません。インディの琢磨にしても実力でシートを勝ち取っているというよりは、ホンダのサポートでなんとか維持しているのが実情では?

結局、現状の国内育成プログラムは、各メーカーによるGT500/SFの自社ワークスドライバー育成システムでしかないんですよね。

その証拠に、現在のGT500/SFは各メーカーの育成システム出身ドライバーで埋め尽くされています。世界に進出するドライバーがいない上に、トップまで辿り着くと余程の成績不振でない限り切られることもないので、上が詰まり増える一方。弊害としてGT300でどれだけ活躍しても、育成枠以外は500へステップアップできないという、競争としてはなんとも不健全な状況に陥っています。

GT500とクラス1規定を共有するDTMの場合、今シーズン主に参戦した24人中、地元ドイツ人は”たったの”7人しかいません。インディでは、今年フル参戦した20人中、こちらも地元アメリカ人は”たったの”7人です。いずれも自国のドライバーは約3割程度しかいないんですね。高性能なクルマを操るトップカテゴリーですから、世界中から限られたハイレベルなドライバーが集まりシート争奪戦は熾烈。自国出身という理由だけではそうそうシートは獲得できません。

翻って日本を見てみると、GT500ではレギュラードライバー30人中、日本人は実に22人(!) SFでも19人中12人と全体の約6〜7割にも達します。当然ほぼ全員が、メーカー別育成プログラムの出身者、HFDP/TDP/NDDPのサポートを受けたドライバーで占められています。

もちろん地理的、文化的環境も考慮する必要があるので、一概には断言できないのですが、それでもこの自国ドライバーの多さは異常に映ります。同じ国内シリーズでもBTCC、NASCAR、豪スーパーカー、ストックカー・ブラジルなどが比較対象であれば、それほど差異は生じませんが、これらは開催規模はともかく、マシンの性能的には明らかにGT500/SFより下です。GT500/SFと競合するのは、そんなロースペックなカテゴリーなんでしょうか?

 

 

自動車メーカーのサポートはある種”諸刃の剣”でもあり、皮肉なことに日本人ドライバーが国際的に活躍できない理由の一つにもなっていると考えます。あまりにメーカーの”色”が強過ぎるんですね。

前回も述べた通り、欧州ではメーカーはF3などで”スカウト”するのが一般的です。しかし日本人が欧州のジュニア・フォーミュラに参戦する場合、”Honda Protege””Toyota Protege”とメーカーの”色”が最初から付いてしまっています。もちろんレッドブルやフェラーリのサポートを受けているドライバーもいますが、彼らの場合はF1が唯一絶対の目的であって、F1に上がれない時点でサポートは打ち切られるのが普通です。その時点で”色”はなくなり、新たな目標を定め直すことになります。

それに対して日本人ドライバーは過去の経緯から、F1に上がれなければ日本に戻ってSGTやSFをやるものと欧州の関係者から認識されています。マックス・フェルスタッペンのような、余程とてつもない活躍でも見せればまた別でしょうが(そもそもその場合はF1に上がれます)、日本に戻ってホンダやトヨタのワークスドライバーになるのがわかっていて、わざわざスカウトする欧州メーカーなどありません。メーカーの”色”があまりに強過ぎるんですね。

日本のモタスポ界も星野さんや長谷見さん、中嶋さんなどの時代は、レースで好成績を収めてメーカーからスカウト→ワークス契約を勝ち取るという”ごくごく当たり前のシステム”でした。しかし今は、スクールでスカラシップを獲得(入社)→F4, F3(平社員)→GT300(係長)→GT500(課長)→ワークスドライバーとして定着(モータースポーツ部長)など、まるでサラリーマンのように社内で昇進して行くだけです。こんな歪な形は世界的に見ても日本くらいでしょう。

先日オートスポーツ誌のコラムで大串さんが「速いドライバーは育成では作れない」「”育成システム”でなく”淘汰システム”であるべき」と書かれていましたが、全く同感です。今の日本の年功序列的、家族主義的な環境のままでは、50年100年経ってもF1チャンピオンなんて生まれないでしょうね。

ここがヘンだよ、ニッポンの育成プログラム(1)

ホンダのSRSやトヨタのFTRSが開校して約20年。佐藤琢磨、中嶋一貴、小林可夢偉という国際レベルのドライバーを輩出し、これまで一定の役割を果たしてきたと言えるでしょう。しかし本当にこのような”スクール”は必要なのでしょうか? 日本のモータースポーツにとって本当に有益なのでしょうか?

欧州には自動車メーカーが直接的にレーシングドライバーを育成・養成するようなスクールなど存在しません。そもそも幼い頃からレーシングカートをやってきたドライバーに、手取り足取りステアリング操作やブレーキの踏み方、ラインの取り方など教える必要があるのでしょうか? そういうのは入門フォーミュラ・チームでエンジニアなどにアドバイスを受けながら、ドライバー自ら学んでいくというのが、欧州での一般的な考え方でしょう。

よく勘違いしている方もいますが、F1チームや欧州メーカーは”育成”などしないんです。レッドブルが代表的ですが、彼らが行うのはあくまで金銭的・環境面のサポートであって、せいぜい専門家によるトレーニングやメディア対応、最近ではシミュレーターの使用程度でしょう。あとはドライバー自身が与えられた中で、彼らを納得させるだけの結果を出せるかどうかであり、できなければ切るだけです。大変シビアですが、合理的でもあります。つまり彼らが行うのはあくまで”投資”や”青田買い”であって、決して”育成”ではないんですね。そのため最近では日本で使われている”Development Program”より”Junior Program”と名付ける方が多いのです。

またF1チームは入門フォーミュラから目をつけるケースもありますが、欧州メーカーは最低でもF3をまともに走れるドライバーでなければ相手にすらしません。F3で光る原石を見出して初めて、自社のジュニアプログラムに”スカウト”するわけです。”育成”ではなく”スカウト”という所がポイントですね。メーカーによる育成プログラムが注目を集めたのは、90年代初頭のメルセデス・ジュニアチームがきっかけかと思いますが、あれにしても単純に前年のドイツF3上位3名をスカウトしただけの話です。

例えば今シーズンのDTMに参戦したドライバーの内、タイトル争いを繰り広げたマルコ・ヴィットマン、エドアルド・モルターラをはじめ、ジェイミー・グリーン、ゲイリー・パフェット、ポール・ディ・レスタ、ルーカス・アウワー、トム・ブロンクビスト、ダニエル・ユンカデッラ、エステバン・オコン、フェリックス・ローゼンクビスト、それに昨年のチャンピオンでF1へ進出したパスカル・ヴェアラインなど、彼らは皆ユーロF3(現FIA F3)で活躍しスカウトされたドライバーです。今シーズンもジョエル・エリクソンがBMW、マキシミリアン・ギュンターがメルセデスのジュニアプログラムにそれぞれスカウトされています。F3が若手ドライバー発掘の場としてきちんと機能しているんですね。

翻って日本はどうでしょう? 今年、全日本F3 Cクラスに参戦した13名のうち、三浦愛、イェ・ホンリー、山口大陸を除く10名が3大メーカーからサポートを受けるドライバーで占められています。トムスにTDP、B-MAXにNDDP、リアル&戸田にHFDPと、まるで各育成プログラムの代理戦争かのように振り分けられ、一見FCJかと見紛うほどです。これでは”FCJ-F3″とでも言いたくなります。

つまり現在の全日本F3にはメーカー系のスクールに合格しスカラシップを取得、メーカーのサポートを受けたドライバー”しか”実質的に参戦できないのです。Nクラスを圧勝しようが、FIA-F4で活躍しようが、3大メーカーのサポート外のドライバーにはF3(C)に参戦するチャンスすらない。スクールに入れなかった時点で、国内トップカテゴリーへの道はほぼ閉ざされるわけです。たった15歳〜18歳で、ですよ? これが果たして健全な競争環境だと言えるのでしょうか?

「Cクラスは参戦費用が高いので、日本ではメーカー支援に頼るしかない」という意見もあるかもしれません。だったらスクール出身者を優遇せずとも、FIA-F4でそのスカラシップ生より光るドライバーがいれば、新たにそちらへサポートを変更すればいいだけの話です。

しかし実際にそんなことが起こる確率はゼロに近いでしょう。メーカーの育成担当と言っても所詮はサラリーマンですから、自らの見る目のなさ、スクールの存在意義を失うような決定をできるわけがないのです。

こうして見ると、実力重視でスカウトされる欧州に対して、日本の育成システムはまるで「自動車メーカー直営のエレベーター式ドライバー学校」のようです。一旦スクールでスカラシップを獲れば、F4→F3→GT300→GT500/SFと、余程不本意な成績でない限り、メーカーの枠内で着実に出世できるのですから。しかも外でどれだけ実力をつけても、このエレベーターに途中から乗り込むことはできません。

スクールに入れるかどうか、スカラシップを獲得できるかどうかで、ある程度のドライバー人生まで決まってしまう日本の育成システム。ちょっとおかしくないですか?

日本の育成問題(2):欧州と真逆なシステム

先日、BMWは17歳のスウェーデン人Joel Erikssonを育成プログラムに加えることを発表しました。Erikssonは昨年ドイツADAC F4でランキング2位に。現在はMotoparkからFIA-F3に参戦し、これまで3度の表彰台に立つなどランキング8位につけています。( 参照記事 )

さて、では同様のこと、つまりF4やF3で注目されてメーカーにスカウトされるということが、日本でも起こり得るでしょうか? もちろんゼロではないでしょうが、非常にレアなケースだと思います。

日本の場合、メーカーはSRSやFTRSなどのスクールに受講生を募集し、それに合格してスクールで好成績を残したドライバーがスカラシップを獲得、初期からメーカーのサポートを受けてF4なりF3なりに出場するケースがほとんどでしょう。むしろメーカーのサポートがなければF3に出場すらできないのが現実かもしれません。

結果を出したドライバーはその後もサポートを受け続け、そのままファクトリードライバーになることが一般的です。一種の”自家培養”であり、そこに外部から入り込む余地はほとんどありません。現在の日本人GT500ファクトリードライバーは、メーカー間の移籍を除き、ほぼ全員このパターンではないでしょうか?

一方、欧州ではこのようなケースは非常に稀です。マクラーレン(Kevin Magnussen、Stoffel Vandoorne)やレッドブルのようなF1チームにしろ、ルノー(古くはアロンソやグロージャン、現在はOliver Rowland、Jack Aitkenなど)、メルセデス(Paul di Resta、Pascal Wehlein、Robert Wickens、Felix Rosenqvistなど)、BMW(Jorg Muller、Marco Wittmann、Tom Blonqvist、Antonio Felix Da Costaなど)、アウディ(Edoardo Mortara、Laurens Vanthoor、Nico Mullerなど)、ポルシェ(Brendon Hartley、Earl Bamber、Nick Tandyなど)のような自動車メーカーにしろ、FルノーやF3で目に止まったドライバーをスカウトする、あるいはセレクションを通して育成ドライバーを選抜するのが当たり前です。ハミルトンやLance Strollのようにカート時代からサポートされる例外もありますが、メーカー自らスクールに関与して、海のものとも山のものともわからぬドライバーをサポートすることなど、ほぼありません。ある意味、リスクが少なく、非常に合理的とも言えますよね。

更にはあるメーカーの育成プログラムから別メーカーの育成プログラムに移行するケースさえあります。

Mirko Bortolottiというイタリア人ドライバーがいます。イタリアF3や短期間復活開催されていたFIA-F2でチャンピオンを獲得するなど、実力あるドライバーですが、彼は当初レッドブルのサポートを受けていました。そこをクビになった後、今度はフェラーリのドライバー・アカデミーに所属、それも外された後はランボルギーニの育成プログラムに加わり、現在は同社のファクトリードライバーとしてイタリアGTなどに参戦しています。日本で言えばHFDPからTDPに移り、現在はニッサンで走っているようなものですね。こんなこと日本ではまず起こり得ないでしょう。

自分としては欧州メーカーのやり方の方が、はるかに公正で健全だと思います。各種国際大会などでの成果という意味でも、欧州式に軍配が上がるのではないでしょうか。あくまで自家培養に拘る日本メーカー(特にホンダ)を見ていると、苛立ちさえ覚えます。これでは日本からF1ウィナーが出ることなど、まだ数十年は無理だと思わざるを得ません。