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2017シーズンレビュー(2) FIA F3

 

Lando Norris won the FIA Formula3 European Championship 2017 with Carlin

Lando Norris and Carlin team (Photo:FIA F3)

前回のFIA F2に続いて、今回はFIA F3を振り返ります。

MuckeやT-Sportがシリーズから撤退し、僅か5チームになってしまった今季のFIA F3でしたが、そのレース内容は昨年を上回る充実したものでした。

 

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2017シーズンレビュー(1) FIA F2

 

Charles Leclerc, 2017 FIA F2 Champion

Charles Leclerc won the FIA F2 Championship in 2017 (Photo:Hello Monaco)

年の瀬ということで、今シーズンの各ジュニアカテゴリーを振り返ってみたいと思います。まずはF1直下のカテゴリーであるFIA F2から。

 

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2017 マカオGPレビュー

2nd(left) Lando Norris, Winner(center) Dan Ticktum, 3rd(right) Ralf Aron

2nd; Lando Norris, Winner; Dan Ticktum, 3rd; Ralf Aron(Photo:Macau Daily Times

Joel ErikssonとCallum Illotのクラッシュまでは、下馬評通りFIA F3の”トップ4”の優勝は固いかと思われたのですが………最終コーナーでの大どんでん返しの末、最後に笑ったのはノーマークだったDaniel Ticktum。ここまでの番狂わせは2008年の国本京佑以来かもしれません。

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ルクレールが初のGP3~F2連覇か? 2017 FIA F2プレビュー

さて、こちらも開幕後のプレビューです(^^;)

昨年はシリーズ参戦初年度のPrema Racingが、シリーズ史上初のドライバーズ1-2独占と圧勝した”GP2改め新生FIA F2”ですが、今シーズンも彼らの強さは続くのでしょうか?

 

本命Premaは変わらず。LeclercはGP3と連覇?

今季のPremaはCharles Leclerc(モナコ)&Antonio Fuoco(イタリア)というルーキー二人を起用しました。いずれもフェラーリ・ドライバーアカデミーに所属し、Leclercは昨年のGP3チャンピオン、Fuocoも同3位と好成績を残したコンビです。

開幕ラウンド・バーレーンでは早速フロントロウを独占。Fuocoは規定違反が見つかり降格となったものの、Leclercはレース1で表彰台、レース2ではピットストップしながらのごぼう抜きで初勝利を挙げ、早くもタイトルの本命に躍り出ました。開幕戦を見る限り、今年もPremaがシリーズをリードして行くのは間違いなさそうです。

ちなみにこれまでGP3とGP2を連覇したドライバーはまだ一人もいません。今後、FIA F3との合併によりGP3は消滅する可能性もあり、Leclercが最初で最後の連覇を達成するのでしょうか?

 

RowlandはDAMSの体制次第か

そんな彼らの対抗馬と見られるのは、DAMSに移籍した2年目のOliver Rowland(イギリス)15年にFルノー3.5でチャンピオンに輝いた後、昨年MP MotorsportからGP2にステップアップ。実績の乏しいチームながら、中盤のシルバーストーンを終えた時点でランキングトップに立つ活躍を見せました(最終的には9位)

RowlandはFルノー2.0および3.5時代、日本で今”旬”なPierre Gaslyとタイトル争いを演じたライバル。FルノーEurocupではGaslyがチャンピオンでRowlandは2位(ちなみに3位はエステバン・オコン)、翌年の3.5では、Gaslyは未勝利ながらランキング2位、Rowlandは2勝を挙げたものの4位でした(チャンピオンはカルロス・サインツJr) この二人が再び相見えるところを見てみたいですね。

ただ一つ気がかりなのはDAMSの体制面。Formula E開始以降、チームの主力はそちらに注がれており、実際この2年間タイトル争いとは全く縁がありません。現状ではPrema優勢は間違いなく、相当なインプルーブがなければ、タイトル奪還は厳しいでしょう。

 

最後のチャンスに賭ける松下

その他、注目のドライバーを挙げると、Russian Timeに移籍した2年目のLuca Ghiotto(イタリア)と3年目を迎える松下信治。それに昨年GP3でARTのチームメイトだったAlexander Albon(タイ)とNyck de Vries(オランダ)、Formula V8 3.5 2位のLouis Deletraz(スイス)のルーキー3人でしょうか。

GhiottoはGP3時代、チャンピオンは獲れなかったものの、エステバン・オコンよりPP数・勝利数とも上回った速さの持ち主。昨年はTridentという弱小(失礼!)チームながら1勝&ランキング8位を獲得しました。Russian Timeはレースペースに定評があり、開幕ラウンドでもレース1でArtem Markelovが優勝、レース2でGhiottoが2位に入っています。予選ペースさえ改善されれば、対抗に躍り出ても不思議ではありません。

松下にとっては間違いなくF1へのラストチャンスとなります。今年スーパーライセンスの基準を満たせなければ、彼の欧州での活動は間違いなく終了でしょう。

上位を走る速さ自体はあるのですが、レース・マネージメント(と言ってもFIA F2の場合、ほぼタイヤ管理)が不得意なのと、つまらないミスが多いのが難点です。昨年は特に自らのミスでせっかくのチャンスをフイにする場面が多く、そこが改善されない限りトップ3はかなり難しいでしょうね。

そもそもジュニアの同一カテゴリーで、同じチームに3年以上在籍するのは、あまり誉められたものではありません。ART Grand Prixはこの10年間でタイトルこそ二度(09年ニコ・ヒュルケンベルグ、15年ストッフェル・ファンドゥーン)に止まっていますが、ジュール・ビアンキ、エステバン・グティエレス、昨年のセルゲイ・シロトキンなど、毎年常に一人はトップ3に送り込んでいる強豪です。そんなチームで3年間一度もトップ3にも入れないなら、F1など望むべくもないでしょう。

 

シリーズ全体を見渡すと、昨年のトップ6のうち5人が卒業したことで、総じて小粒感は否めません。エントリーもCarlinが撤退して10チーム20台に減少しており、競技レベルは昨年より若干低下しているでしょう。それでもFIAの冠が付いたことで、F1に最も近いシリーズとしての地位はむしろ盤石になったと言えます。

 

プレマ7連覇か? 怪物ノリスか? 2017 FIA F3プレビュー

既に開幕しているのに、プレビューも何もないのですが(^^;) とりあえず開幕戦も踏まえつつ、今シーズンの見どころ・予想などをば。

 

Premaの7連覇なるか?

前身のEuro Series時代に、ASM/ARTが04年〜09年にかけて6連覇(04年ジェイミー・グリーン、05年ルイス・ハミルトン、06年ポール・ディ・レスタ、07年ロマン・グロージャン、08年ニコ・ヒュルケンベルグ、09年ジュール・ビアンキ)という記録を作りましたが、昨年Prema Powerteamがとうとうそれに並びました(11年ロベルト・メルヒ、12年ダニエル・ユンカデッラ、13年ラファエル・マルチェロ、14年エステバン・オコン、15年フェリックス・ローゼンクビスト、16年ランス・ストロール)。今シーズンは各種レギュレーションの変更(空力開発&テストの制限、エンジンの抽選制など)が行われ、戦力差の是正が図られたわけですが、大勢に影響を及ぼすのでしょうか?

 

タイトルの本命は二人の英国人

今シーズンのタイトル争いの本命は、そんなプレマ7連覇の期待を背負うCallum Ilottと、マクラーレンのジュニア・プログラムに選ばれたLando Norris、二人のイギリス人ドライバーでしょう。この二人、奇しくもシングルシーター3年目の同期なのですが、これまでの道のりは対照的です。

Ilottはマックス・フェルスタッペンがカートからいきなりFIA F3、そしてF1まで一気に上り詰めたことに影響を受けたのか、同じようにカートからいきなりFIA F3に飛び級デビューしましたが、ものの見事に惨敗に終わり、せっかくのレッドブルのサポートも失ってしまいます。それでも、昨年は2勝を挙げるなどして、徐々に本来の才能を見せ始め、マカオでも活躍。3年目の今年は早々に”常勝”Premaへの移籍が決まり、エースとしてチャンピオン最有力と目されています。

一方、Norrisは以前の記事でも紹介しましたが( Lando Norris:未来のF1チャンピオン? )、カートで世界チャンピオンに輝いた才能がありながらも、MSA Formula(現British F4)から地道にステップアップする道を選びました。しかもデビュー以降、MSA Formula、Toyota Racing Series、Fルノー2.0 Eurocup&NECと、これまでフル参戦した全てのカテゴリーでタイトルを獲得する怪物ぶりを見せています。

F3よりテスト規制の緩いこれらのカテゴリーでたっぷり走り込んだことで、デビューからのマイレージはIlottを軽く凌駕するほか、昨シーズン終盤から既にFIA F3へのテスト参戦も始めており、マカオでも脅威の13台抜き (!) を披露するなど、ルーキー故の不利は見当たりません。

所属するCarlinは昨年こそ成績が奮わなかったものの、それはチーム力云々というより、ドライバーがダメ過ぎたのが原因です。実際、15年にはアントニオ・ジョビナッツィをランキング2位に導いていますし、強力なラインナップを揃えた昨年のマカオでは1-3フィニッシュを達成しています。総合的に若干Premaに劣るのは否めませんが、タイトルを争う実力は十分に備えています。

開幕ラウンドのシルバーストーンを見た限りでも、この二人の速さは際立っていました。少なくとも昨年のストロールのような独走劇はなく、最終戦までタイトル争いがもつれるのは間違いないでしょう。

 

対抗の3人

そんなイギリス人二人の対抗馬と目されるのが、参戦2年目のJoel Eriksson(スウェーデン)と3年目のMaximilian Gunther(ドイツ)、それにGP3から転向したJake Hughes(イギリス)の3人。

Erikssonは昨年、レッドブル・ジュニアのNiko Kari&Sergio Sette Camaraと、フェラーリ・ジュニアのGuan Yu Zhouをチームメイトに持ちながらも、彼らを大きく上回るランキング5位を獲得。BMWのジュニア・プログラムにも選ばれた、今ノリに乗っている若手です。一発の速さより、安定して上位を走れるレースに強いドライバーで、開幕ラウンドでも早速1勝を挙げた他、2位&4位という安定感でランキングトップに立っています。

所属するMotoparkでは、チームメイトが下位カテゴリーでも実績の乏しい新人二人 (Keyvan Andres Soori&佐藤万璃音) のため、彼にチーム力が集中すると思われるのもプラスでしょうか。

Guntherは昨年からメルセデスのジュニア・プログラムに所属。今シーズンはDTMリザーブドライバーとの兼任になります。

昨年ランキング2位からの残留なので、本来なら彼が本命になるべきところですが、ADAC Fomel Masters (現ADAC F4) でも2年連続2位など、どうにも勝負弱い。ある意味、昨年ストロールの独走を許した戦犯でもあり、今年も上位には入りこそすれ、結局タイトル争いには絡めないのではと予想します。

HughesはGP3からのスイッチ。F3→GP3というケースは多々ありますが、逆は大変珍しいパターンです。昨年のGP3ではDAMSで2勝を挙げ、福住仁嶺に次ぐランキング8位。Fルノーからのステップアップ組では、Jack Aitkenに次ぐ2番目の成績でした。日本人にとっては15年のEurocup、スパで笹原右京と優勝争いを演じたドライバーと言えば、覚えている方もいるのでは?(レース1はPP Hughes/優勝笹原、レース2はPP笹原/優勝Hughes)

GP3からの転向とはいえ、昨年のマカオでもほぼ初めてのF3マシンを難なく乗りこなしており、F3の経験不足をほとんど感じさせませんでした。今シーズンはHItech GPの事実上のエースとして活躍が期待されます。

 

注目のシューマッハー・ジュニア

Mick Schumacher with Angelo Rosin (Motorsport.com)

ジュニアカテゴリーの中でも、F1ファンに最も注目されているドライバーと言えば、ミハエル・シューマッハーの息子Mickでしょう。昨年ドイツとイタリアのFIA-F4で、いずれもランキング2位に躍進。今年PremaからFIA F3にステップアップしました。

ただ客観的に評価すれば、残念ながら父親ほど突出したドライバーとは思えません。良くも悪くも凡庸というか、これといった”ウリ”がないんですね。それなりの速さはありますし、将来GTなどで活躍する才能はあると思いますが、ヒル親子やロズベルグ親子のように、親子2代でのF1チャンピオンというのは、夢のまた夢ではないでしょうか? 同じ2世ドライバーで言えば、アラン・プロストの息子、ニコラ程度と見ています。今年のチーム内でも、IlottとGuntherには及ばず、Zhouとの3番手争いが関の山で、ランキング的にも中位に収まると予想されます。

 

牧野任祐はどこまでやれるか?

最後に日本人が最も気になるであろう牧野任祐について。

開幕ラウンドでは予選は9〜10位、決勝は後方に沈む結果に終わりました。1ポイントも取れなかったのは、個人的にも予想外でしたね。特に昨年のSuper GTでの鮮烈な印象が強い日本のファンからすると「あれ?」という結果だったのではないでしょうか。「牧野なら選手権トップ2は固い」とか”ぬかしてた”、ホンダの山本雅史MS部長の感想を伺いたいものです。

今シーズン、全日本F3には過去2年間GP3に参戦していたAlex Palouが参戦し、いきなりトップタイムを叩き出すなど衝撃を与えていますが、彼はGP3では何度かPPこそ獲得しているものの、全体的には中団を走っていたドライバー。それだけ欧州のジュニアフォーミュラは層が厚いということですね。F1目指して世界中から若手ドライバーが集まってくるわけですから、当然と言えば当然ですけど。

松下信治と福住仁嶺の場合はチーム (ART Grand Prix) に恵まれた部分も大きいと思います。Hitech GPもARTと技術提携しているとはいえ、まだ欧州復帰2年目。特に開幕ラウンドでは、牧野以外のドライバーも全体的に低迷しており、まだPremaほどの総合力はありません。

牧野の才能自体は、シリーズでも屈指のレベルだとは思います。あとはどれだけ早く、欧州での生活やチームの仕事の進め方、それに何と言っても”レースの違い”に慣れるかがポイントでしょうね。

先日、WEC開幕戦のGTE-Amクラスで初優勝を飾った澤圭太も「これまでやってきたアジアのレースと世界選手権、ヨーロッパのレースは、やっぱり何かが違うな、と感じます。僕自身がドライバーとしてやっていることは大して変わらないので、具体的に何が違うのかはよく分からないんですけど……」( フェラーリでWECフル参戦の澤圭太、LMP1との混走は「スーパーフォーミュラと一緒にGT300で走る感じ」 )と語っていますが、野球やサッカーと同じように、同じモータースポーツでも、場所が変われば中身も変わるんですよね。ホンダがその辺もちゃんと理解して、サポートしてくれればいいのですが……。

 

ドライバー次第で勢力図が変わる

今シーズンのFIA F3は、Mucke MotorsportとT-Sportが参加を取り止め、僅か5チームとなってしまいました。Premaが一歩抜きん出ているのは変わらないとしても、弱小・小規模チームが消え、生き残った5チームにその差はほとんどありません。そのためFIA F2やGP3と違って、チーム力よりドライバーの力で、いくらでも勢力図が変わるシーズンになりそうで、その意味ではジュニアカテゴリーとして正しい姿になったとも言えそうです。