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2017シーズンレビュー(3) GP3, F4ほか

 

George Russell and ART guys

George Russell (Photo:GP3 Series)

FIA F2同F3と続いて、最後はGP3とその他のシリーズをまとめて振り返ります。

 

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ARTの独壇場が続くか? 2017 GP3&F3.5プレビュー

最後にGP3およびFormula V8 3.5のプレビューと、その他の注目ドライバーなどを。

 

GP3:ARTの独壇場は変わらず

GP3では今シーズンもART Grand Prixが、George Russell(イギリス、昨年FIA F3 3位)、Jack Aitken(イギリス、同GP3 5位)、Anthoine Hubert(フランス、同FIA F3 8位)、そして福住仁嶺(同GP3 7位)という、反則というか、えげつないラインナップを揃えました。2010年のシリーズ創設から、8年間で5度目のドライバーズタイトルと、7度目(!)のチームタイトルは、既にこの時点で99.9%確実と言ってもいいでしょう。このシリーズに関しては、今シーズンもARTの独壇場ですね。

中でもタイトルの本命は、メルセデス・ジュニアに選ばれたGeorge Russell。昨年はPremaが支配するFIA F3において、新興Hitech GPからの参戦ながら、Premaの二人に次ぐ総合3位と大健闘を見せました。”FIA F3の中堅チームで活躍→ARTからGP3にステップアップ”、という流れは、昨年のチャンピオンCharles Leclercと同じルートですね。それにしてもイギリスからは次々と有望な若者が現れて羨ましい限りです。

George Russell (ART Grand Prix official)

Jack Aitkenは韓国とイギリスのハーフ。15年にFルノーEurocupとAlpsの2冠を達成。昨年はルーキーながら、経験に勝るチームメイトのJake Dennisと遜色ない走りでランキング5位を獲得。Fルノー上がりではトップの成績でした。最強ARTに移籍した今季は、チャンピオン以外は視界にないでしょう。

福住くんは昨年、初欧州な上に強力なチームメイトに囲まれながらもランキング7位と、1年目としては上々の成績でした。今年は1年の経験と、チーム残留のアドバンテージがある以上、チーム内最下位というわけには行きません。最低でも1勝、ランキング5位以内が及第点でしょうか(*開幕戦レース1で初優勝) 松下信治が今年でFIA F2ラストなのはほぼ確実なため、その後釜となれるかどうかがかかります。

 

GP3 その他の注目ドライバー

タイトルに関してはARTの4人以外に想像できないのですが、それ以外にも注目ドライバーを何人か。

Niko Kariはフィンランドの次代を担うと期待されている若手ドライバー。15年にSMP F4で21戦7勝表彰台19回と圧倒的な強さでチャンピオンを獲得し、レッドブルの育成プログラムに抜擢されましたが、昨年ステップアップしたFIA F3では、F4とのレベル差に順応できず総合10位と期待はずれの結果に終わりました。今季はGP3に転向し再起を期すシーズンとなります。

そんな成績にも関わらず、結果にシビアなレッドブルがサポートを継続するほどですから、その才能は高く買われているのでしょう。幸い所属するArden Internationalは、ドライバーズタイトルを2度獲得(12年ミッチ・エバンス、13年ダニール・クビアト)した、GP3ではARTに次ぐ強豪。昨年の経験を活かせれば、ARTの強力カルテットに割って入る可能性は十分にあります。

Niko Kari (nikokari.fi)

Jenzer MotorsportのArjun Maini(インド)とAlessio Lorandi(イタリア)は、いずれも昨シーズン途中にFIA F3からGP3にスイッチしたドライバー。特にMainiは転向早々から上位を走り、表彰台も獲得するなど、開幕2ラウンドを欠場しながらランキング10位に入る活躍でした。Jenzerへ残留し、今シーズンはトップ5も期待されます。また先日、ハースF1の開発ドライバーにも選ばれました。

開幕前最後のテストでトップタイムを記録したDorian Boccolacci(フランス)は、開幕1週間前になってようやくTridentと正式契約を交わしました。15年にFIA F3に参戦したものの不本意な成績に終わり、昨年はFルノー2.0に”ステップダウン”しましたが、Eurocupで2位、NECで3位を獲得。テストでの速さを見る限り、回り道は無駄ではなかったように見られます。Tridentは15年にLuca Ghiottoがランキング2位、昨年はAntonio Fuocoが同3位と2年連続でタイトル争いを演じており、Boccolacciもダークホースになるかもしれません。

日本をはじめF1ファンが気になるのは、ジャン・アレジの息子Giulianoくんでしょうが、彼はまだまだ経験不足。結果を出すにはもう少し時間がかかるでしょうね。

 

Formula V8 3.5は全く見どころなし

今シーズンのWorld Series Formula V8 3.5(長いのでWS3.5で統一w)に関しては、ハッキリ言って見るべきところは全くありません。

昨年エントリーが15台まで減少したものの、今季はWECとの提携によって、多少は盛り返すのでは?とも期待されたのですが、チャンピオンチームのArdenまでがまさかの撤退! 僅か12台という、なんとも寂しい光景となってしまいました。

量だけでなく質の面でも状況は深刻で、昨年はエントリーこそ少ないながらも、Tom Dillmann、Louis Deletraz、Mathieu Vaxiviereといったレベルの高いドライバーの参加によって、シリーズの質はなんとか保たれていたのですが、今シーズンは”ペイドライバーの巣窟”とでも呼べるような惨状を呈しています。

ラインナップを見れば明らかなように、名門Fortec Motorsportはメキシコマネーに、昨年Dillmannをドライバーズタイトルに導いたSMP Racing by AVFはロシアマネーに依存しています。本人には失礼ながらも、GP3では後方をウロウロしていたAlfonso Celis Jrが優勝できてしまうのが、現在のレベルを端的に表しています。開幕ラウンドで連勝したPietro Fittipaldiにしても、昨年は同じくルーキーのチームメイト、Deletrazに完敗していたドライバーですからね。

正直言って、現在は末期のAutoGPに近いように見えます。クルマは高性能でカッコイイ(個人的には現在のフォーミュラカーでいちばん好き)のに、なんとも勿体無い。

モータースポーツ全体を取り巻く環境の悪化もあり、WECのサポートイベントになったからと言って、そう簡単に再浮上は叶わないのも致し方ない部分もあります。まずはシリーズからLMP2やGTEプロ、あるいはWECでなくとも、ELMSへステップアップする実例・実績が必要でしょうね。それが増えることで、非現実的なF1より、現実的なGTやスポーツカーでプロを目指すドライバーを惹きつけられるようになるかと思います。

 

Fルノー&F4で注目のヤングドライバー

最後にFルノーやF4など、入門フォーミュラで個人的に注目しているドライバーを。

Fルノー2.0に参戦するレッドブル・ジュニアのRichard Verschoor (MP Motorsport) はロビン・フラインス、マックス・フェルスタッペンに続く、オランダ期待の若手ドライバー。昨年シングルシーターにデビューすると、SMPとスペインの各F4をまたいで15連勝という記録を作りました。もちろん台数の多寡もあるため、単純に数字で評価はできませんが、それでもなかなかできることではありません。オフシーズンに行われたToyota Racing Series (TRS) でも3位を獲得しており、レッドブルにとっても次代のF1候補生でしょう。

Richard Verschoor (RED BULL JUNIOR TEAM)

同じくFルノー参戦の中国人ドライバーYifei Yeは、昨年のフランスF4(日本のJAF-F4と同じく、独自規格のF4)で23戦14勝と圧倒的強さでチャンピオンを獲得しました。一方で並行して参戦したイタリアF4では未勝利に終わっており、なかなか評価が難しいところです。名門Josef Kaufmann Racingでカーナンバー1を背負う今シーズンのEurocupが、評価のバロメーターになるでしょう。

Marcus Armstrong(ニュージーランド)はカートで活躍後、昨シーズン終盤にFルノーで4輪デビュー。強豪ひしめくEurocupでいきなり表彰台を争い、一躍注目を集めました。フェラーリ・ドライバーアカデミーにもスカウトされ、TRSではランキング4位に。今シーズンはドイツのADAC F4に強豪Prema Powerteamからフル参戦します。ニュージーランドも小国ながら、近年次々と有望なドライバーを輩出しており、日本もその育成システムをもっと研究すべきではないでしょうか?

最後に今年シングルシーターにデビューしたVictor Martins(フランス) 体操選手から、13歳と比較的遅くにカートへ転向した変わり種ですが、それからたった3年でCIK-FIAの世界チャンピオンまで上り詰めた天才です。昨年フランスF4にスポット参戦し、いきなり表彰台を獲得。今年は同シリーズにフル参戦し、開幕2ラウンドで3勝4PPを挙げ、早くもランキングトップに立っています。このレベルでは、今年最も注目を集めるドライバーになるでしょう。既にF1チームもいくつかは目を付けているでしょうね。

Victor Martins wins WSK Final Cup at Adria (Kartcom)

 

ミッドシーズンレビュー(3):FIA-F3

今シーズンのFIA-F3はLance Stroll (Prema) がほぼ独走中で、タイトルはほぼ間違いないでしょう。というより、Prema勢がランキング1-2-4位なほか、トップ8のうち6人がPrema勢とHitechGP勢で占められるという歪な状態です。過去2年はCarlinやVan Amersfoort (VAR) が対抗していましたが、今シーズンはほとんど勝負になりません。

これは大富豪(Prema=Strollパパ、HitechGP=Mazepinパパ)に買収されたこの2チームが、その資金力を元に風洞を使ってエアロ開発までしているのが主な原因です。レギュレーションのグレーゾーンを衝いたこの行為に、FortecやDouble Rなどのチームが抗議、撤退したことにより、昨年から10台以上もエントリーが激減しました。そして彼らの懸念通りにPremaとHitechGPが支配するシーズンとなっているわけです。

では台数が減った分、少数精鋭なのかと言えばそうでもなく、むしろ昨年一昨年と較べて、明らかにレベルは低下しています。昨年はFelix Rosenqvist (Prema)、Antonio Giovinazzi (Carlin)、Charles Leclerc (VAR) が、一昨年はEsteban Ocon (Prema)、Rosenqvist (Mucke)、Max Verstappen (VAR) が、熾烈なタイトル争いを繰り広げましたが、残念ながら今年は彼らに匹敵するような人材は見当たりません。

前述の2チームに対抗するため、その他のチームの持ち込み資金の要求額が増加した結果、ペイドライバーが多くなってしまいました。Motoparkがレッドブルとフェラーリの育成ドライバーを抱えてるのが代表的で、Leclercも本来はVARで2年目を過ごす計画でしたが、持参金が足りずGP3へスイッチしたほどです。

さすがにFIAも対策に乗り出し、来シーズンから風洞の使用やエアロ開発は禁止されることになりました。それでも資金力の差は影響するでしょうが、少なくとも格差是正はされるものと思われます。

ドライバー別に目を移すと、Verstappenに影響されて、昨年カートから一足飛びにFIA-F3へステップアップしたCallun Ilott (VAR) とAlessop Lorandi (Carlin) ですが、いずれも今年は勝利を挙げるなど昨年から進歩自体は見られるものの、その度合いは小さいですね。GP3ほどではないにせよ、FIA-F3もFルノーよりは明らかに走行機会は少なく、経験を積むためのマイレージが足りていないのでは? 来シーズンにはこの2年間、FIA-F4やFルノーでじっくり走り込んできたLando Norrisが参戦してくるでしょうが、初年度から彼ら二人を上回ると思います。

イタリアとSMP(北欧)の各FIA-F4からステップアップしてきたRalf Aron (Prema) とNiko Kari (Motopark)は、昨年のStroll同様、周囲の急激なレベル上昇にまだ対応しきれていないという印象ですね。特にSMPシリーズはエントリーが10台ちょっとしかないので、そこで勝ちまくる速さがあると、むしろPPから独走し、バトルを経験しないまま上に上がってしまいます。このFIA-F4(国内)とFIA-F3(欧州)の間を埋めるために、FIAはナショナルF3をF3 Light Seriesとして復活させようとしていますが、さてどうなるのか。。。。

個人的に今シーズン注目しているドライバーは、David Beckmann (Mucke) です。昨年、同じFIA-F4でも40台強ものエントリーを集めるドイツADAC F4でシリーズ2位。今季開幕時はまだ年齢要件を満たさなかったため、16歳の誕生日を待ってのシーズン途中でのデビューでしたが、チームメイトのMikkel Jensen(ADAC Fomel Masters時代には、現在ランキング2位のMaximilian Gunther (Prema) を破ってチャンピオン獲得)と互角に渡り合っています。同じドイツ出身のPascal WehleinのFIA-F3デビュー時を想起させ、今後要注目の一人だと思います。

レッドブルの”次”がいない

レッドブルの育成プログラムでは2009年以降、ブエミ、アルグエルスアリ、ヴェルニュ、リカルド、クビアト、サインツ、フェルスタッペンと、F1レベルの才能が次々と生まれていました。最初の3人は既にグループを離れ、現在は残りの4人がトロロッソ(STR)を含めた4つのシートを埋めている状態です。

しかし、もしリカルドがレッドブルの対応に不満を募らせて移籍(フェラーリ?)した場合、レッドブルのシートが一つ空くことになります。クビアトが”復帰”すれば、空きはSTR一つで済みますが、サインツが”昇格”した場合、先日の交代劇への不満を鑑みると、クビアトまでがグループを離脱しかねません。そうなるとSTRは二つともが空席になってしまいます。

「でもレッドブルなら、次もいくらでも候補がいるんでしょ?」というのが、世間一般のイメージかもしれませんが、現状はこれが非常に厳しいのですね。

最も近いのは既にF1テストにも参加している、GP2参戦2年目のPierre Gaslyですが、確かに才能も速さもあるものの、いかんせん過去2年Formula Renault 3.5とGP2で優勝ゼロでは、昇格させるかどうか悩むところでしょう。じゃあAntonio Felix Da Costaはなぜ昇格させなかったんだ?という話にもなりますし。今シーズンも開幕から2ラウンドが終わって未だ優勝なしと、下手すると昇格云々以前にサポートを打ち切られる可能性すらあります。

FIA F3には今シーズンからSergio Sette CamaraとNiko Kariという二人の若手がいますが、Camaraは年齢を考えれば十分及第点なものの、GP2で上に行けるかと言えば厳しい……。Kariはフィンランドの次代を担う期待の若手ですが、敵なしのSMP F4からダイレクトに、強者揃いのFIA F3に上がって、早くも壁にぶち当たっているのが現状です。逆に昨年1年限りでサポートを打ち切ったCallum Ilottがタイトル争いを演じているのが、なんとも皮肉ですよね。

つまりGaslyが近いうちにブレイクしない限り、今後2〜3年以内にF1に昇格できるような若手は、レッドブルのグループ内にはいないということです。

もしリカルド移籍、サインツ昇格、クビアト離脱となった場合、マルコおじさんはどんな手を打つのでしょうか? 全く無関係なベテランの起用? それともSTR自体を手放す??