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2017シーズンレビュー(2) FIA F3

 

Lando Norris won the FIA Formula3 European Championship 2017 with Carlin

Lando Norris and Carlin team (Photo:FIA F3)

前回のFIA F2に続いて、今回はFIA F3を振り返ります。

MuckeやT-Sportがシリーズから撤退し、僅か5チームになってしまった今季のFIA F3でしたが、そのレース内容は昨年を上回る充実したものでした。

 

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牧野任祐が所属するハイテックというチーム

ホンダのサポートの下、今シーズンから欧州へ渡り、FIA F3へ参戦中の牧野任祐。彼が所属しているのが、イギリスに本拠を置くHitech Grand Prixです。しかしCarlinやART Grand Prixといった、これまでに日本人ドライバーが所属したことのあるチームと違って、日本では馴染みが薄いのではないでしょうか。一体どんなチームなのでしょう?

日本のモータースポーツメディアでは、よく”新興”チームと紹介していますが、実際は”再興”チームと表現した方がより正確です。ただ事実上、新チームと言っても間違いではありません。理由は後述します。

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プレマ7連覇か? 怪物ノリスか? 2017 FIA F3プレビュー

既に開幕しているのに、プレビューも何もないのですが(^^;) とりあえず開幕戦も踏まえつつ、今シーズンの見どころ・予想などをば。

 

Premaの7連覇なるか?

前身のEuro Series時代に、ASM/ARTが04年〜09年にかけて6連覇(04年ジェイミー・グリーン、05年ルイス・ハミルトン、06年ポール・ディ・レスタ、07年ロマン・グロージャン、08年ニコ・ヒュルケンベルグ、09年ジュール・ビアンキ)という記録を作りましたが、昨年Prema Powerteamがとうとうそれに並びました(11年ロベルト・メルヒ、12年ダニエル・ユンカデッラ、13年ラファエル・マルチェロ、14年エステバン・オコン、15年フェリックス・ローゼンクビスト、16年ランス・ストロール)。今シーズンは各種レギュレーションの変更(空力開発&テストの制限、エンジンの抽選制など)が行われ、戦力差の是正が図られたわけですが、大勢に影響を及ぼすのでしょうか?

 

タイトルの本命は二人の英国人

今シーズンのタイトル争いの本命は、そんなプレマ7連覇の期待を背負うCallum Ilottと、マクラーレンのジュニア・プログラムに選ばれたLando Norris、二人のイギリス人ドライバーでしょう。この二人、奇しくもシングルシーター3年目の同期なのですが、これまでの道のりは対照的です。

Ilottはマックス・フェルスタッペンがカートからいきなりFIA F3、そしてF1まで一気に上り詰めたことに影響を受けたのか、同じようにカートからいきなりFIA F3に飛び級デビューしましたが、ものの見事に惨敗に終わり、せっかくのレッドブルのサポートも失ってしまいます。それでも、昨年は2勝を挙げるなどして、徐々に本来の才能を見せ始め、マカオでも活躍。3年目の今年は早々に”常勝”Premaへの移籍が決まり、エースとしてチャンピオン最有力と目されています。

一方、Norrisは以前の記事でも紹介しましたが( Lando Norris:未来のF1チャンピオン? )、カートで世界チャンピオンに輝いた才能がありながらも、MSA Formula(現British F4)から地道にステップアップする道を選びました。しかもデビュー以降、MSA Formula、Toyota Racing Series、Fルノー2.0 Eurocup&NECと、これまでフル参戦した全てのカテゴリーでタイトルを獲得する怪物ぶりを見せています。

F3よりテスト規制の緩いこれらのカテゴリーでたっぷり走り込んだことで、デビューからのマイレージはIlottを軽く凌駕するほか、昨シーズン終盤から既にFIA F3へのテスト参戦も始めており、マカオでも脅威の13台抜き (!) を披露するなど、ルーキー故の不利は見当たりません。

所属するCarlinは昨年こそ成績が奮わなかったものの、それはチーム力云々というより、ドライバーがダメ過ぎたのが原因です。実際、15年にはアントニオ・ジョビナッツィをランキング2位に導いていますし、強力なラインナップを揃えた昨年のマカオでは1-3フィニッシュを達成しています。総合的に若干Premaに劣るのは否めませんが、タイトルを争う実力は十分に備えています。

開幕ラウンドのシルバーストーンを見た限りでも、この二人の速さは際立っていました。少なくとも昨年のストロールのような独走劇はなく、最終戦までタイトル争いがもつれるのは間違いないでしょう。

 

対抗の3人

そんなイギリス人二人の対抗馬と目されるのが、参戦2年目のJoel Eriksson(スウェーデン)と3年目のMaximilian Gunther(ドイツ)、それにGP3から転向したJake Hughes(イギリス)の3人。

Erikssonは昨年、レッドブル・ジュニアのNiko Kari&Sergio Sette Camaraと、フェラーリ・ジュニアのGuan Yu Zhouをチームメイトに持ちながらも、彼らを大きく上回るランキング5位を獲得。BMWのジュニア・プログラムにも選ばれた、今ノリに乗っている若手です。一発の速さより、安定して上位を走れるレースに強いドライバーで、開幕ラウンドでも早速1勝を挙げた他、2位&4位という安定感でランキングトップに立っています。

所属するMotoparkでは、チームメイトが下位カテゴリーでも実績の乏しい新人二人 (Keyvan Andres Soori&佐藤万璃音) のため、彼にチーム力が集中すると思われるのもプラスでしょうか。

Guntherは昨年からメルセデスのジュニア・プログラムに所属。今シーズンはDTMリザーブドライバーとの兼任になります。

昨年ランキング2位からの残留なので、本来なら彼が本命になるべきところですが、ADAC Fomel Masters (現ADAC F4) でも2年連続2位など、どうにも勝負弱い。ある意味、昨年ストロールの独走を許した戦犯でもあり、今年も上位には入りこそすれ、結局タイトル争いには絡めないのではと予想します。

HughesはGP3からのスイッチ。F3→GP3というケースは多々ありますが、逆は大変珍しいパターンです。昨年のGP3ではDAMSで2勝を挙げ、福住仁嶺に次ぐランキング8位。Fルノーからのステップアップ組では、Jack Aitkenに次ぐ2番目の成績でした。日本人にとっては15年のEurocup、スパで笹原右京と優勝争いを演じたドライバーと言えば、覚えている方もいるのでは?(レース1はPP Hughes/優勝笹原、レース2はPP笹原/優勝Hughes)

GP3からの転向とはいえ、昨年のマカオでもほぼ初めてのF3マシンを難なく乗りこなしており、F3の経験不足をほとんど感じさせませんでした。今シーズンはHItech GPの事実上のエースとして活躍が期待されます。

 

注目のシューマッハー・ジュニア

Mick Schumacher with Angelo Rosin (Motorsport.com)

ジュニアカテゴリーの中でも、F1ファンに最も注目されているドライバーと言えば、ミハエル・シューマッハーの息子Mickでしょう。昨年ドイツとイタリアのFIA-F4で、いずれもランキング2位に躍進。今年PremaからFIA F3にステップアップしました。

ただ客観的に評価すれば、残念ながら父親ほど突出したドライバーとは思えません。良くも悪くも凡庸というか、これといった”ウリ”がないんですね。それなりの速さはありますし、将来GTなどで活躍する才能はあると思いますが、ヒル親子やロズベルグ親子のように、親子2代でのF1チャンピオンというのは、夢のまた夢ではないでしょうか? 同じ2世ドライバーで言えば、アラン・プロストの息子、ニコラ程度と見ています。今年のチーム内でも、IlottとGuntherには及ばず、Zhouとの3番手争いが関の山で、ランキング的にも中位に収まると予想されます。

 

牧野任祐はどこまでやれるか?

最後に日本人が最も気になるであろう牧野任祐について。

開幕ラウンドでは予選は9〜10位、決勝は後方に沈む結果に終わりました。1ポイントも取れなかったのは、個人的にも予想外でしたね。特に昨年のSuper GTでの鮮烈な印象が強い日本のファンからすると「あれ?」という結果だったのではないでしょうか。「牧野なら選手権トップ2は固い」とか”ぬかしてた”、ホンダの山本雅史MS部長の感想を伺いたいものです。

今シーズン、全日本F3には過去2年間GP3に参戦していたAlex Palouが参戦し、いきなりトップタイムを叩き出すなど衝撃を与えていますが、彼はGP3では何度かPPこそ獲得しているものの、全体的には中団を走っていたドライバー。それだけ欧州のジュニアフォーミュラは層が厚いということですね。F1目指して世界中から若手ドライバーが集まってくるわけですから、当然と言えば当然ですけど。

松下信治と福住仁嶺の場合はチーム (ART Grand Prix) に恵まれた部分も大きいと思います。Hitech GPもARTと技術提携しているとはいえ、まだ欧州復帰2年目。特に開幕ラウンドでは、牧野以外のドライバーも全体的に低迷しており、まだPremaほどの総合力はありません。

牧野の才能自体は、シリーズでも屈指のレベルだとは思います。あとはどれだけ早く、欧州での生活やチームの仕事の進め方、それに何と言っても”レースの違い”に慣れるかがポイントでしょうね。

先日、WEC開幕戦のGTE-Amクラスで初優勝を飾った澤圭太も「これまでやってきたアジアのレースと世界選手権、ヨーロッパのレースは、やっぱり何かが違うな、と感じます。僕自身がドライバーとしてやっていることは大して変わらないので、具体的に何が違うのかはよく分からないんですけど……」( フェラーリでWECフル参戦の澤圭太、LMP1との混走は「スーパーフォーミュラと一緒にGT300で走る感じ」 )と語っていますが、野球やサッカーと同じように、同じモータースポーツでも、場所が変われば中身も変わるんですよね。ホンダがその辺もちゃんと理解して、サポートしてくれればいいのですが……。

 

ドライバー次第で勢力図が変わる

今シーズンのFIA F3は、Mucke MotorsportとT-Sportが参加を取り止め、僅か5チームとなってしまいました。Premaが一歩抜きん出ているのは変わらないとしても、弱小・小規模チームが消え、生き残った5チームにその差はほとんどありません。そのためFIA F2やGP3と違って、チーム力よりドライバーの力で、いくらでも勢力図が変わるシーズンになりそうで、その意味ではジュニアカテゴリーとして正しい姿になったとも言えそうです。

 

FIA-F3、コスト削減と格差是正のための新規則策定

FIAのWorld Motor Sport Councilは、FIA-F3を財政的に健全な状態に保つため、コスト削減の一環として現行シャシーの使用を延長することを決定しました。これによりダラーラF312は2019年まで使用されることになり、チームは少なくとも3年間は新車への投資の必要がなくなります。

http://www.thecheckeredflag.co.uk/2016/08/euro-f3-regulation-changes-aim-championship-stability-affordability/

また安全性のための改良を除き、チームによる空力などの開発も禁止されます。当然風洞の使用も禁止され、コストを抑えることになります。この新しいレギュレーションは戦力の均衡化が目的で、PremaやHitech GPなどの資金力豊富なチームのアドバンテージを削ることになるでしょう。

FIAシングルシーターコミッション代表のステファノ・ドメニカリは、この新レギュレーションを歓迎しています。シリーズにポジティブな影響を与え、2015年末にFortecやDouble Rなど複数のチームが撤退した状況から、より健全で視界良好なシリーズにできると確信しているようです。

「シングルシーターレースの総合的な経済状況を鑑みるに、ドライバーやチームのためにシリーズの価値を上げる努力を続ける必要があるのは明らかだ」

「新たな技術規則によって、コスト削減に重要なステップを踏み出したと言えるだろうし、同時にチーム間の格差も是正されると思う」

「全てのチームが来シーズンを同じベースラインから始めることになるだろう。一方で今年既に見られている傾向だが、全てのチームが勝てる状況は続けるべきだ」

「現在の参戦チームのレベルやプロフェッショナリズムを維持したいと思っているが、新たなチームの参入にもオープンでいる。ただ所属するチームによって成績が左右されるべきではないし、誰もがレースに勝ちタイトルを争えるチャンスがあるべきだ」

先の記事の通り、今シーズンはPremaとHitech GPが、資金力を活かした空力開発で圧倒的に有利に立っており、風洞の使用禁止などは歓迎すべきものです。またシャシーの継続使用により、全日本F3 Cクラスも2019年まで現行シャシーが使われることになるでしょう。

ミッドシーズンレビュー(3):FIA-F3

今シーズンのFIA-F3はLance Stroll (Prema) がほぼ独走中で、タイトルはほぼ間違いないでしょう。というより、Prema勢がランキング1-2-4位なほか、トップ8のうち6人がPrema勢とHitechGP勢で占められるという歪な状態です。過去2年はCarlinやVan Amersfoort (VAR) が対抗していましたが、今シーズンはほとんど勝負になりません。

これは大富豪(Prema=Strollパパ、HitechGP=Mazepinパパ)に買収されたこの2チームが、その資金力を元に風洞を使ってエアロ開発までしているのが主な原因です。レギュレーションのグレーゾーンを衝いたこの行為に、FortecやDouble Rなどのチームが抗議、撤退したことにより、昨年から10台以上もエントリーが激減しました。そして彼らの懸念通りにPremaとHitechGPが支配するシーズンとなっているわけです。

では台数が減った分、少数精鋭なのかと言えばそうでもなく、むしろ昨年一昨年と較べて、明らかにレベルは低下しています。昨年はFelix Rosenqvist (Prema)、Antonio Giovinazzi (Carlin)、Charles Leclerc (VAR) が、一昨年はEsteban Ocon (Prema)、Rosenqvist (Mucke)、Max Verstappen (VAR) が、熾烈なタイトル争いを繰り広げましたが、残念ながら今年は彼らに匹敵するような人材は見当たりません。

前述の2チームに対抗するため、その他のチームの持ち込み資金の要求額が増加した結果、ペイドライバーが多くなってしまいました。Motoparkがレッドブルとフェラーリの育成ドライバーを抱えてるのが代表的で、Leclercも本来はVARで2年目を過ごす計画でしたが、持参金が足りずGP3へスイッチしたほどです。

さすがにFIAも対策に乗り出し、来シーズンから風洞の使用やエアロ開発は禁止されることになりました。それでも資金力の差は影響するでしょうが、少なくとも格差是正はされるものと思われます。

ドライバー別に目を移すと、Verstappenに影響されて、昨年カートから一足飛びにFIA-F3へステップアップしたCallun Ilott (VAR) とAlessop Lorandi (Carlin) ですが、いずれも今年は勝利を挙げるなど昨年から進歩自体は見られるものの、その度合いは小さいですね。GP3ほどではないにせよ、FIA-F3もFルノーよりは明らかに走行機会は少なく、経験を積むためのマイレージが足りていないのでは? 来シーズンにはこの2年間、FIA-F4やFルノーでじっくり走り込んできたLando Norrisが参戦してくるでしょうが、初年度から彼ら二人を上回ると思います。

イタリアとSMP(北欧)の各FIA-F4からステップアップしてきたRalf Aron (Prema) とNiko Kari (Motopark)は、昨年のStroll同様、周囲の急激なレベル上昇にまだ対応しきれていないという印象ですね。特にSMPシリーズはエントリーが10台ちょっとしかないので、そこで勝ちまくる速さがあると、むしろPPから独走し、バトルを経験しないまま上に上がってしまいます。このFIA-F4(国内)とFIA-F3(欧州)の間を埋めるために、FIAはナショナルF3をF3 Light Seriesとして復活させようとしていますが、さてどうなるのか。。。。

個人的に今シーズン注目しているドライバーは、David Beckmann (Mucke) です。昨年、同じFIA-F4でも40台強ものエントリーを集めるドイツADAC F4でシリーズ2位。今季開幕時はまだ年齢要件を満たさなかったため、16歳の誕生日を待ってのシーズン途中でのデビューでしたが、チームメイトのMikkel Jensen(ADAC Fomel Masters時代には、現在ランキング2位のMaximilian Gunther (Prema) を破ってチャンピオン獲得)と互角に渡り合っています。同じドイツ出身のPascal WehleinのFIA-F3デビュー時を想起させ、今後要注目の一人だと思います。