笹原右京」タグアーカイブ

2017シーズンレビュー(3) GP3, F4ほか

 

George Russell and ART guys

George Russell (Photo:GP3 Series)

FIA F2同F3と続いて、最後はGP3とその他のシリーズをまとめて振り返ります。

 

続きを読む

笹原右京は日本のFIA-F4参戦。Fルノーからステップダウンの怪

なぜこのような決定になってしまうのか理解に苦しみます。

昨年、資金不足のため欧州でのシリーズ参戦を中断し、SRS-Fに入校。(順当に)スカラシップを獲得した笹原右京ですが、 ホンダのリリース によると、17年は日本のFIA-F4に参戦するとのことです。

SRS-FからF4というルート自体はごく標準的なものですし、彼がカートを卒業したばかりで、シングルシーターの経験も少ない16〜17歳のドライバーなら、この決定に何の違和感もありません。

しかし笹原の場合、既にフォーミュラ・ルノーで3年の経験があるだけでなく、NECではランキング3位、ユーロカップでも優勝経験のあるドライバーです。NECで彼がタイトル争いを繰り広げたLouis Deletrazは、昨年Formula V8 3.5でランキング2位となり、今年はGP2へステップアップと、早くもF1の一歩手前まで来ていますし、Jack Aitken、Anthoine Hubert、Jake Hughes、Kevin JorgらFルノーで鎬を削ったドライバーたちも、既にGP3やFIA F3で活躍中です。

また彼はスポット参戦したイタリアF4でも、当時参戦中だったランス・ストロールらを破って優勝していますし、昨年はFIA F3にThreeBond with T-Sportから2戦にスポット参戦もしています。昨年の開幕前にはFIA F3でマックス・フェルスタッペンやシャルル・レクレールを擁しタイトルを争った強豪チーム、Van Amersfoort Racingからオファーを受けテストに参加、レギュラーへの誘いも受けました(前述の通り資金不足で実現せず)。

FルノーとFIA-F4はいずれも入門カテゴリーの位置付けですが、一般的には欧州シリーズのFルノーの方が、ナショナルシリーズのF4よりも上位と認識されています(ドイツADAC F4を除く) 実際、Lando NorrisなどF4とF3の間にFルノーを挟むドライバーも多くいますね。

つまりFルノーからF4というのは事実上ステップダウンになる上、シングルシーター転向から3年でF3まで到達しながら、5年目にしてF4に落ちるという、キャリアとしては支離滅裂な状況なわけです。

笹原側が望んでSRS-Fを選んだのか、ホンダ側からSRS-Fでのスカラシップ獲得をサポートの条件とされたのか私にはわかりませんが、もし後者だとすれば、わざわざ貴重な1年をスクールで棒に振らせず、Fルノーでの実績を考慮して、昨年中に試験的にF4で走らせてみれば良かったのです。そこでホンダが納得する成績ならHFDPでサポートすればいいし、期待以下ならバッサリ切ればいいだけの話です。

ホンダには頑固なまでの純血主義(SRSから自社に所属するドライバーしかサポートしない)がありますが、ここまで来るともはや目的と手段が入れ替わっており本末転倒でしょう。

まさか「Fルノーなんて大したレベルじゃないだろう。日本のF4の方がはるかに上だ」などと考えているのでしょうか? だとしたら自信過剰も甚だしい。今流行りの「ニッポンスゴイ系」ですか??

この決定は今後、世界を夢見る少年たちに「下手にカートから欧州に行って苦労して活動するより、ウチのスクール入って国内でステップアップした方が早いよ」とホンダが宣伝しているようなものです。若い才能が海外に流出して困るのは国内メーカーですからね。万一、早くから海外に出られて、向こうの自動車メーカーやF1チームに抜擢されでもしたら、ホンダやトヨタの(育成に関しての)無能ぶりが晒け出されることになるわけですから。

欧州が絶対などと言うつもりは毛頭ありませんが、日本のモータースポーツ界はなぜか欧州帰りの選手に異様に厳しいように見えて仕方ありません。メーカーのプログラム外なら尚更です。海外で実績を積んでも国内では何のメリットにもならないという現実には腹立たしさを覚えます。なぜ国内の育成プログラムはこれほどまでに内向きなのでしょうか?

 

日本の育成問題(1):笹原右京のSRS入り

カート時代から欧州で孤軍奮闘を続けてきた笹原右京ですが、今年は欧州でのステップアップを断念し、驚くことにSRS(鈴鹿レーシングスクール)への入校という道を選びました。おそらくはSRSでスカラシップを獲得し、ホンダのサポートを得た方が今後に有益との判断なのだと思われます。

笹原は4輪デビューからの3年間、主にFormula Renault 2.0(FR2.0)に参戦してきました。欧州レースをそれほどウォッチしていない方は「そうは言っても、所詮は日本のF4レベルでしょ?」と思われるかもしれませんが、FR2.0の中でもEurocupで上位を走るドライバーは、上のカテゴリーにステップアップ後、即タイトル争いを繰り広げるような強者ばかりなんですね。

特にRobin Frijns(現Formula E アンドレッティ、ブランパンGT WRTアウディ)は、ダイレクトにFormula Renault 3.5へステップアップし、ジュール・ビアンキやサム・バードといった既にGP2で優勝経験のあった強豪を相手に、1年目でいきなりタイトルを獲得しました。今話題のStoffel Vandoorneも同様に、ルーキーながら接戦の末ランキング2位(チャンピオンはケビン・マグヌッセン)と好成績を挙げています。

そんな連中を相手に、笹原はEurocupでは2005年の小林可夢偉以来の優勝を挙げたわけです。またスポット参戦したイタリアFIA-F4でもLance Stroll(現ウィリアムズ開発ドライバー)らを相手に回し、デビューラウンドで優勝を飾っています。

彼が1〜2年目に所属したEuronova Racingは、同格にあたるFormula Abarthの経験こそありましたが、FR2.0は初参戦のためデータが全くない状態でした。また昨年所属したART Junior Team(現R-ACE GP)にしても、元となったR-ACE GP自体は決して強豪と呼べるほどの体制ではなく、実際、彼よりランキング上位は、Koiranen GP、Josef Kaufmann Racing、Fortec Motorsport、Tech1 Racingといった、タイトル経験のある強豪チームのドライバーで占められていました。

そんな中で笹原はランキング7位を獲得。トップ争いしながら些細なミスやアクシデントで落としたレースもいくつかあり、本人としては不本意な結果でしょうが、先の強豪を相手にしてのこの成績は関係者の間では高く評価されていました。オフシーズンにFIA-F3の強豪、Van Amersfoort Racingのテストに参加できたのも、実力が評価されてのことだと思います(実際、カネで参加できるほど持参金はありませんし)

しかし残念ながら、相応の持参金がなければシートを得られないのが欧州ジュニア界の現状です。昨年しのぎを削ったドライバーたちは、今年順調に上位カテゴリーにステップアップしています。NECシリーズ・チャンピオンのLouis DeletrazはFortecからFormula V8 3.5に参戦し、既に優勝も経験。Eurocup&Aplsシリーズ・チャンピオンのJack Aitken、Kevin Jorg、Jake HughesらはGP3へ、そしてBen BarnicoatとAnthoine HubertはFIA-F3へとステップアップし、こちらも既に優勝済みと、いずれもその実力の高さを見せています。Deletraz、Aitken、Jorgの3人はルノーの育成プログラムにも選ばれました。そんな中、彼らと互角に戦った笹原が日本に戻ってスクールというのが、なんともやりきれません。。。。。

日本のモータースポーツ界、特に”自家培養”にこだわる自動車メーカーは、FR2.0で活躍しているドライバーをステップアップさせない責任を大いに感じるべきだと思います。身内に優しく外様にはとことん冷たい・・・こんな現状を見せられると、暗澹たる気持ちになりますね。