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フォーミュラE シーズン3 レビュー(2) チーム編

 

間が空いてしまいましたが、前回のドライバー編に続いて、今回はチーム別のシーズンレビューです。来季以降の動向なども交えて振り返ってみましょう。

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フォーミュラE シーズン3 レビュー(1) ドライバー編

 

16/17 Formula E Champion:Lucas di Grassi(Photo:CNN

セバスチャン・ブエミが開幕から6戦5勝した際には、今シーズンのタイトルは早々に決まりかと思われたのですが、後半にまさかの急失速。抜群の安定感でコツコツとポイントを積み重ねたルーカス・ディ・グラッシが、3年目にして初のタイトルを獲得しました。そんなFormula Eシーズン3を振り返ってみます。

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Formula E シーズン3展望

Formula Eシーズン3(16/17)が開幕しました。

まず今シーズンのドライバーの顔触れを見てみると、

・元F1ドライバー/現LMP1ワークスドライバー:3人(ブエミ、ディ・グラッシ、サラザン)
・元F1ドライバー:4人(ダンブロジオ、ハイドフェルド、ヴェルニュ、ピケ)
・LMP1ドライバー:2人(プロスト、デュバル)
・WTCCチャンピオン&ウイナー:2人(ロペス、チンホワ)
・GTファクトリードライバー:5人(バード、ローゼンクビスト、エンゲル、ダ・コスタ、ターベイ)
・ジュニアフォーミュラの元トップランカー:4人(アプト、フラインス、キャロル、エバンス)

と、なっています。

かつてはトゥルーリをはじめ、セナ、アルグエルスアリ、リウッツィ、チャンドック、ピックなど、元F1ドライバーが多数を占めていましたが(初年度の主な参戦ドライバーでは20人中、実に13人!)、今シーズンは7人にまで減少しました。代わって増えたのがWECやGTなど他カテゴリーの実力派ドライバーです。初年度はマーケティング的にも元F1ドライバーというステータスに頼っていた感がありますが、Formula Eのプレゼンス上昇に伴い、その必要がなくなって来たということでしょう。シリーズのレベルアップのためにも、名から実への移行は歓迎できる傾向です。

個人的にはアダム・キャロルがようやくレギュラーシートを獲得したのが嬉しいニュースでした。GP2時代はハミルトンやロズベルグ、ピケらと争った上位の常連であり、一時期はホンダF1のテストドライバーも務めたほど。また今は亡き(笑)A1GPでチャンピオンを獲得するなど、シングルシーターで抜群の実績を残しながらも、その後はシートに恵まれず、ドライバーコーチやWEC GTE-Amなどに甘んじてきました。FEでも何度か出走寸前まで行きましたが土壇場で逃し続け、ようやく念願叶ってデビューする苦労人です。

 

 

さて今シーズンの勢力図ですが、大本命がルノーe.DAMSなのは間違いないでしょう。オペレーション・ディレクターのVincent Gaillardotさんも仰っていますが、DS Virginなどが一からパワートレインを設計し直したのに対して、ルノーは昨シーズンのアドバンテージから、マネージメントプログラムの最適化や信頼性の向上に集中、総合力で他より一歩先を行っている印象です。昨シーズンのような波や取りこぼしがなければ、ドライバー、コンストラクター共に2連覇に死角はないでしょう。

対するアプトはこれまでは財政支援のみだったアウディが、本格的なファクトリーサポートを発表。今シーズンはまだ支援強化というレベルですが、これまで以上に技術的関与が深まることは間違いありません。

また今シーズンからの規則変更でFLが1ポイントになったことにも注目です。昨シーズンは”純粋な”シリーズポイント自体ではディ・グラッシがトップだったものの、PPとFLの多さでブエミにタイトルを奪われました(いずれもディ・グラッシはゼロ) PPの3点はそのままですが、少なくともFLのアドバンテージが減ったことにより、ディ・グラッシの常に上位フィニッシュする安定感が大きな武器になるでしょう。

この2チームは、国際F3000〜GP2で何度もタイトルを勝ち取ったり(DAMS)、DTMでアウディのワークスチームを受け持ったり(アプト)と、マニュファクチャラーを除いた純粋なチーム力でも、頭一つ抜けています。

その”2強”に続くのはDS Virginでしょう。バードが香港で見せたスピードからも、DSによる完全新設計のパワートレインは相当なポテンシャルを秘めていそうです。ツインモーターからシングルモーターへのスイッチが最大の変更点ですが、昨シーズンは契約時期の関係で間に合わなかったDS(シトロエン)の技術協力が、今後惜しげも無く投入されていけば、タイトル争いで2強に割って入る存在になる可能性は十分あるでしょう。ただ現状では香港でバードに起こったようにまだ信頼性に難がありそうで、今季ランキングで2強に挑むにはかなり厳しいと予想します。

昨シーズンからパワートレインを変更したのがFFドラゴン、アンドレッティ、Techeetahの3チームです。FFドラゴンとアンドレッティは独自開発に、Techeetahはルノーから供給を受けることになりました。

アンドレッティATEC-02は本来は昨シーズンから導入予定だったものの、開幕に間に合わず断念。さすがに1年熟成してきただけに、開幕から順当な性能を発揮しています。更に正式にBMWとの提携が発表され、今後の性能向上にも期待が持てます。パワートレインとは関係ありませんが、既に開幕戦でもクラッシュ、大破したフラインスのマシンをBMWスタッフの協力で短時間で修復するなど、提携が効果を発揮していますね。

FFドラゴンは昨シーズン、ヴェンチュリ製のカスタマーユニットを使用していましたが、今シーズンからはFaraday Futureと提携しPenske 701-EVを投入しました。ただこちらはまだ途上段階であり、上位争いにはもう少し時間がかかりそうです。この米国の2チームには、BMWとFaraday Futureの開発競争の趣もありますね。

一方、チーム・アグリを買収して誕生したTecheetahは、プレシーズンテストでトップタイムをマークし一躍ダークホースに躍り出ました。実際ヴェルニュには勝つだけのポテンシャルがありますし、どこかで思わぬ活躍を演じる可能性は十分です。ただチームの中身はというと、ほぼチーム・アグリそのもの。マニュファクチャラーチームに対してリソース面で劣るのは否めません。プライベートテストも行えておらず、ルノー製パワートレインの把握・最適化もまだ半ばといったところでしょう。

その他のチームを見ると、マヒンドラは優等生というか、初年度から年々順調にレベルアップしていますね。香港でもハイドフェルドが3位表彰台を獲得し、ローゼンクビストもFLを記録するなど、幸先の良いスタートを切りました。今シーズンは初優勝の可能性も感じさせます。

NEXTEVの驚きのフロントロー独占は、運・タイミングに助けられた面は否めないものの、ドライバーが「完全なブランニューカー」と表現するように、昨シーズンよりはツインモーターの開発・最適化が進み、確実に戦闘力は増しています。ただ決勝でのタイムの落ち方(エネルギーマネージメントに問題があった模様)を見る限り、信頼性も含め、まだ上位を争うには物足りない印象です。またこれまで現場のオペレーションはカンポス・レーシングが担っていましたが、今シーズンからは独自チームとなったことで、先のピットタイミングの失敗のようにオペレーション上のミスも懸念されます。

ヴェンチュリは超絶地味なラインナップですが(笑)その分安定感はありそうです。ただここは初年度からパワートレインというより、車体のセッティングやチームの運営面が問題。パワートレイン自体は昨年カスタマー供給したドラゴンが優勝しているように、上位を争うポテンシャルがあるのですが、EVメーカーとしては実績のある企業とはいえ、レーシングチームとなるとまだまだな部分がありますね。その点が改善されない限り、今シーズンも上位に食い込むのは難しいでしょう。ちなみにMotorsport.comの順位予想でも最下位でした。。。。

最後に新規参入のジャガーですが、代表のJames Barclayはじめチーム関係者も明言する通り、まだまだ学習段階でしょう。ポテンシャルは抜群ですが、それを発揮するには来シーズンまで待つ必要がありそうです。ただ何度か上位に入賞する力は十分あるでしょうね。

ドラゴン、エッケラートと契約

Faraday Future Dragon Racingが、ベテラン・エンジニアのジャッキー・エッケラートをリクルートしたようです。来季は同じくベルギー出身のジェローム・ダンブロジオの担当になるとのこと。

Dragon signs ex-F1 chief designer Eeckelaert

エッケラートはこれまでABT Schaeffler Audi Sportで、ダニエル・アプトのエンジニアを務め、昨シーズンのチームランキング2位に貢献していました。

エッケラートはフォードでキャリアを始めた後、F3000やF1で活躍。DAMS、ジョーダン、プロスト、ザウバー、そしてホンダやスーパーアグリに所属していたことで、日本でも専門誌などでよく名前を見かけましたね。

最近ではHRT F1に参加し、最後のクルマとなったF112のデザインを指揮。その後、コリン・コレスのスポーツカー・チーム(当時ロータス、現ByKolles)に在籍した後、2012年の終わりにABTに加入しDTMに関わっていました。

Dragon RacingはまたVenturiからNicolas Mauduitをエンジニアリング・ディレクターとして招聘しています。彼は主にペンスキーのNigel Beresfordと共に、来季用Penske 701-EVの開発に携わっているようです。Beresfoldは引き続きテクニカル・ディレクターとレース・エンジニアを務めます。

チームは今月末、スペインでプライベートテストを完了させる予定です。

またWTCCにホンダ・シビックで参戦している、元F1ドライバーのティアゴ・モンテイロが、先日スペインのCalafat circuitで行われた、Mahindra Racingのテストに参加したそうです。既にホセ・マリア・ロペスのDS Virgin加入が決定していますが、モンテイロのFE参戦もあるのでしょうか?

Monteiro tests Mahindra Formula E car at Calafat

Formula Eの面白さ

賛否両論あるFormula Eですが、個人的には今最も面白く、注目しているシリーズです。アラン・プロストの「80年代前半のF1みたいだ」というコメントは、まさに言い得て妙だと思いますね。

アレハンドロ・アガグを中心としたオーガナイザーの仕事ぶりは賞賛に値するでしょう。当初は懐疑的な見方もありましたが、失敗したA1GP(”モータースポーツのワールドカップ”を標榜)や、Super League Formula(モータースポーツとサッカーのコラボレーション??)と違って、「EVによるフォーミュラカーレース」「EVの技術発展」というコンセプトが明快だったので、個人的には成功すると確信していました。コンセプトってレースシリーズを開催する上で、実はとても重要なんですね。最近はF1ですら、それがあやふやになっている気がします。

アガグらは、モータースポーツにとっては致命的とも言える「音が小さい」という弱点を逆にメリットとして、全戦を市街地、それも都市の中心部で開催するというアイデアを実現させました。市街地レースと一言で言っても、日本の例を見れば分かるように、実際に開催するのは容易なことではありません。いくらモータースポーツ文化のある国でも、自治体や警察など多方面との交渉が必要になるため、その労力はクローズド・サーキット開催の比ではないでしょう。それを世界規模で成し遂げたのですから、その交渉力は特筆すべきものがあると思います。

パワーが300馬力程度しかないというデメリットも、壁に囲まれた狭いコース設定にすることで、十分迫力を感じられますし、また1周が2〜3kmと短いため、2ndシーズンのようにエントリーが18台しかなくても、あまり少なさを感じません。もしこれが通常のクローズド・サーキットでの開催だったら、なんら面白みのない退屈なレースになっていたでしょうね。

そしてSNSなどインターネットの積極的な活用です。F1は見事に乗り遅れたわけですが、ファンブーストやバーチャルレースをはじめ、その意義はともかく、ネット世代の若年層を引きつけるようなアイデアを次々と実行しています。シーズン3からの新規参入を決めたジャガーも、この点がFormula Eを選んだ最大の理由だと述べていました。この攻めの姿勢がいいですね。

レース自体に関しては、私も当初はエネルギー消費量を抑える我慢のレースになるのかと思っていましたが、実際には至る所でバトル満載の激しいレースになりましたよね。これには参戦ドライバーのレベルの高さが大いに貢献しています。元F1ドライバーから現役のLMP1ドライバー、メーカーのファクトリードライバーにジュニアカテゴリーのトップランカーと、その顔触れはF1に次ぐレベルにあるでしょう。これが血気盛んなF3などの若手ドライバーだったら、あの狭く短いコースでは、クラッシュが頻発して、とてもレースにならないでしょうね。

技術的にはまだまだ発展途上ではありますが、それゆえにプロストの言うように80年代前半のF1のような、管理され過ぎず、且つ混沌とし過ぎず、程よく洗練され程よく雑多としている、その辺のバランスが今は絶妙だと感じます。もしかしたら今が最もその辺のバランスが取れている時期かもしれません。

今後は多くの人が予想するように、コストコントロールがプロモーターの課題になるのは間違いないでしょう。F1を反面教師にして、アガグは予めロードマップを作成し、徐々に慎重に技術の開放を行っていく予定です。2ndシーズンではパワートレイン(モーター&ギヤボックス)の開発が解禁されましたが、それだけでも結構な格差が生まれていました。特にEVのキモであるバッテリーが自由化された際には、それに合わせてパワートレインも高出力、低電力消費、高効率を目指して各マニュファクチャラーがリソースを投入するでしょうから、そこで上手くコストの高騰を防ぎ、コントロールできるか腕の見せ所になりますね。

またそのような場合でも、小規模チームが生き残っていけて、時にはトップ争いにも加われるような状態を維持できるかも注目点だと思います。F1とは別種のトップフォーミュラとして、今後も拡大を続けてほしいですね。