FIA-F2のエントリーリストに思うこと

 

Racing Engineering

Photo: Zak Mauger/FIA Formula 2 (Racing Engineering)

先日、今シーズンのFIA-F2エントリーリストが更新されました ( FIA Formula 2 Championship’s 2018 Teams confirmed – Formula 2 )。シリーズ撤退と見られていたRussian Timeが一転残留となった一方で、シリーズ創設時から参戦してきたRacing Engineering (RE) がまさかの撤退。また新規参入が予定されていたFortecが参戦取り止めとなり、エントリーは昨年と同じ20台ということになりました。

 

なんのためのカテゴリー整理か

それにしてもFormula V8 3.5 (F3.5) が開催中止に追い込まれたにも関わらず、F2のエントリーが増えないというのは一体どういうことでしょう?

そもそもFIAが数あるジュニアカテゴリーの整理・統合を目論み、FIA-F3とFIA-F4を創設。さらにGP2をFIA-F2にリブランドし、スーパーライセンスのポイント制を利用して、F2への配分を大優遇したことが、F3.5のエントリー激減→シリーズ終了を招いたわけです(直接的にはルノーの支援終了が大きいですが)。FIA側もF3.5終了によりエントリー増を画策していたのでしょうが、蓋を開けてみれば移籍はたったの1チーム。逆にシリーズ発足時から参戦してきた2チームが撤退という有様です。これでは単にシートが10余り減っただけ。一体何のためのカテゴリー整理なのかと思ってしまいます(まぁFIAの既得権、権限強化くらいのものでしょうけれど)。

REとRapaxの撤退で、GP2発足時のオリジナルメンバー(チーム)の中で残っているのはART、DAMS、Ardenの僅か3チームのみとなってしまいました(Camposは09年〜13年にAddaxに売却していたので除外)。しかもチャンピオン経験チームが一気に2つも消えるというのは、シリーズの健全性としてどうなのかと思いますね。

GP2発足以降タイトルのないArdenが生き残っているのは、クリスチャン・ホーナーが共同設立者でレッドブルとの関係があるおかげなのでしょう。逆にTridentはこれまで目立った成績がほとんどないにも関わらず(チームランキングは14年の5位が最高)、06年の参戦開始からよく継続できているなと感心します。

 

GP2/F2専業チームを撤退させる環境

REの撤退は晴天の霹靂でした。オーナーのAlfonso de Orléans-Borbónさんはスペイン貴族であり、スポンサーもDHLなど参戦チームの中では比較的余裕のある方。ドライバーもどちらかと言えば、絶対的な実力よりも確実に資金を持ち込めるドライバーを起用しながら、08年から16年まで9年連続チームランキングでトップ4を維持(GP2で唯一)。08年のジョルジョ・パンターノ、13年のファビオ・ライマーと2度のドライバーズチャンピオンも獲得しました。

このチームが特筆すべきなのは、複数のカテゴリーに参戦している他チームと違って、07年以降GP2/F2のみに専念してきたこと。これだけの実力があれば、他のカテゴリーでも十分成功できると思うのですが(特にFat Burnerがタイトルスポンサーだった時代)不思議とGP2に拘ってきました。そんなシリーズにとっては貴重なチームを失うわけですから、ARTやPremaのようなタイトルの常連チームでないとしても大きな損失です。

ちなみにREはF2に代わりELMSに参戦するとのこと ( Racing Engineering will be competing in the 2018 European Le Mans Series. )。チーム設立当初はGTでル・マンにも参戦していたので、ある意味原点回帰とも言えるのでしょうか。

ジュニアフォーミュラから耐久へスイッチするのはSignatech Alpine (Signature) やISR、Euro International、F1を挟んでいますがManorもそうですね。DAMSやHitech GP、Double Rなども検討中との噂があり、かつてのようにF2/F3000からF1というステップアップが不可能な現在では、トレンドになりつつあるのかもしれません。

ちなみにRapaxの方は、元をたどればネルソン・ピケが息子のために興したPiquet Sportsであり、07年にイタリアのGP Racing Teamと合併してMinardi Piquet Sportsに。その後Minardiが外れてPiquet Sportsに戻り、さらにピケが手を引いたことで2010年にRapaxにリブランドして現在に至るので、厳密に言えばオリジナルメンバーではありませんが、GP2/F2に専念してきたという意味ではREと同じですね。

 

F2に5年も参戦する意味

Russian Timeの参戦継続は、当初はホンダが牧野任祐を乗せるために活動資金を出したのかと思いましたが、何のことはない、単にArtem Markelovがもう1年F2を続けるだけの話でした。まぁホンダが牧野くんのためMarkelov側に「もう1年続けない? こっちで少し予算も負担するからさぁ」とかいう話があった可能性もありますけれど(←疑い深い^^;)単純にMarkelovが「やっぱりもう1年続けよう」となっただけなら、なんともバカバカしい話です。

F2は純粋に速さだけで言えばF1に次ぐカテゴリーですけれど、だからと言って決して”目的地”にはなり得ないのは誰もが知るところ。F2は言ってみれば大学みたいなもので(F3が高校、F4やFルノーが中学、カートが小学校という感じですかね)、当然ながら仕事=プロとして給与を貰ってドライブするカテゴリーではありません。そんなところに5年も、しかも同じチームから出場するのは、単に時間とお金の無駄でしょう。これではボンボンのお遊びと言われても仕方ない。

ランキング2位まで行って、彼にまだモチベーションがあるのかわかりませんが、オートスポーツが言及するほど牧野くんにとってベンチマークにはならないと思いますね。

 

F1関係者限定のカテゴリー?

現状ではまだ半分強のシートしか埋まっていませんが、ここまでの顔触れを見ると、8〜9割方F1チーム&メーカーの支援を受けたドライバー(Norris, Russell, 福住など) と、莫大な資金力を持つドライバー (Gelael, Markelovなど) で占められています。F2に相応しいドライバーのうち、Joel ErikssonはF3でフォーミュラに見切りをつけDTMへ。Maximilian Guntherも結果的に福住くんのチームメイトになりましたけれど、メルセデスがDTMを続けていればそっちになったでしょう。実力者のJake HughesとAlex PalouはGP3/F3で3年目に、Pietro Fittipaldi (F3.5チャンピオン) とHarrison Scott (EFOpenチャンピオン) は欧州自体に見切りをつけ米国に活路を見出しました。新車導入とシリーズの規模拡大によって参戦費用が高騰し、F2はもはやごく限られたドライバーしか参戦できないカテゴリーになってますね。もはやF1関係者限定のカテゴリーのようです。

ほんの5年前にはGP2とFR3.5を合わせて約50ものシートがあったことを考えると、シートの減り方が尋常ではなく、とてもこのまま持続可能とは思えません。少数精鋭と言えば聞こえは良いですが、わざわざ競技者を減らす施策というのはオーガナイザーとしてどうなんでしょう? 国際F3000の二の舞にもなりかねないのでは?と危惧しますね。