2017シーズンレビュー(3) GP3, F4ほか

 

George Russell and ART guys

George Russell (Photo:GP3 Series)

FIA F2同F3と続いて、最後はGP3とその他のシリーズをまとめて振り返ります。

 

ARTの独壇場だったGP3

GP3はART Grand Prixがドライバーズランキングのトップ4を独占、シリーズを席巻しました。当然チームタイトルでも2位にダブルスコア以上の大差をつける圧勝劇で、GP3創設から8年で実に7度目(!)のタイトルを獲得。フィーチャーレースでは8戦7勝、1-2-3フィニッシュは5回を数え、全戦でPP獲得と、まさにARTのための1年だったと言っても過言ではありません。

そんな”ARTクラス”の争いを制したのは、メルセデスジュニアのGeorge Russell。個人的にはそれほど強かった印象はないのですが、フィーチャーレースで8戦4勝。PPも同じく8戦中4回。さらに全15戦中入賞13回(全て6位以上)、リタイア0(DNS1回)という驚異の安定感で、気がつけば2位に80点近い大差をつける圧勝でした。

一方、チームメイトのJack Aitken、福住仁嶺は優勝が少ないのはもちろんですが、入賞圏外+リタイアがそれぞれ5回(加えて福住はDNS 1回)という安定感の欠如が、最終的に大きな差に繋がりました。逆にAnthoine Hubertは入賞13回を記録しながらも、未勝利&表彰台は4回とスピードで劣りましたね。

福住くんは昨年の7位から3位に躍進。フィーチャーレースでの2勝と2回のPP(1回は予選中止のためFPの結果ですが)はRussellに次ぐ数字であり、高評価に価します。ただそれでも最終的にはチーム内で3番手。2位のAitken、4位のHubertとはそれぞれ7点差、11点差と僅差だった一方、F1デビューも噂されるRussellとは86点の大差がつきました。今後F1を狙うならもう1ランクどころか2〜3ランク、レベルアップしなければ、松下同様厳しい結果になるでしょう。まずは来季FIA F2でどんな走りを見せてくれるのか期待したいですね。

 

F2でもおかしくないARTのドライバーラインナップ

それにしても8年で7度のチームチャンピオンというARTの強さはどこから来るのでしょうか? 純粋にチーム力の高さはあるにせよ、どこも打ち負かせないほど絶対的な存在かというと、そうとも思えません。

ART Grand Prix drivers and staff in 2017

ART Grand Prix team (Photo:George Russell Official)

特にこの2年の強さは単純にドライバーの違いではないでしょうか。他チームが主にFルノー等からのステップアップ組を起用しているのに対し、ARTはGP3やFIA F3などで既に実績のあるドライバーを”横滑り”させています。今シーズンで言えばRussellとHubertは昨年のFIA F3でそれぞれ3位と8位、Aitkenと福住くんはGP3で5位と7位だったドライバー。昨年にしてもCharles LeclercとAlexander Albonが前年のFIA F3で4位と7位、Nyck de VriesはFルノー3.5の3位。強豪チームに良いドライバーが集まるのは常とはいえ、このカテゴリーで今すぐにでもFIA F2で通用するようなラインナップを敷くのは、少々ズルいとすら思えますね。

実際12〜14年にはダニール・クビアトやアレックス・リンが、ArdenやCarlinでドライバーズタイトルを獲得していますし、他チームもそのレベルのドライバーを起用できればARTの牙城を崩すことは決して不可能ではないはず。シリーズ最終年となる18年には、そんな展開も期待したいところです。

 

スプリントで存在感を示したアレジJr

ART勢以外で気を吐いたのがGiuliano Alesi (Trident)。リバースグリッドを上手く利用してレース2で3連勝を遂げました。シングルシーターに転向してまだ3年、GP3は参戦2年目の大きな飛躍ですが、シーズン全体で見ればチームメイトのDorian Boccolacciと互角か劣るケースも多く、F2にステップアップするには予選〜レース1の向上が求められます。

プレビューでも触れたAlessio Lorandi、Arjun Maini (いずれもJenzer) 、Nico Kari (Arden) の3人は、それぞれ1勝をマーク。中でもKariの1勝はレッドブルジュニアからの離脱決定後、ARTのフィーチャーレース全勝を阻むもので、レッドブルのプレッシャーから解放された来季は面白い存在になるかもしれません。

チームでは名門DAMSが最下位に低迷、僅か2年で参戦を打ち切る結果となりました。シーズン終盤、スポット起用したDan Ticktumが唯一の表彰台を獲得しましたが、Formula EやFIA F2との兼務はDAMSでも難しかったようです。

 

フィッティパルディの孫がF3.5最後のチャンピオンに

今季WECと提携したもののエントリーが僅か10〜12台まで減少し、今シーズン限りでのシリーズ中止が決定したFormula V8 3.5では、参戦2年目のPietro Fittipaldi (Lotus) が”順当に”チャンピオンを獲得しました。シリーズの魅力低下により有望なドライバー&チームが集まらず、Alfonso Celis JrやTatiana CalderónといったGP3で後方を走るようなドライバーが、優勝したり表彰台に上がるまでに競技レベルは低下。そんな状況ではFittipaldiかEgor Orudzhev (SMP) くらいしか有力なタイトル候補は見当たらず、当然のようにFittipaldiが最後のチャンピオンとなりました。

Pietro Fittipaldi

Pietro Fittipaldi (Photo:The Checkered Flag)

そのような環境なので、チャンピオンを獲ったと言えど、FittipaldiがF2など上のレベルで活躍できるかは微妙なところ。昨年はチームメイトで同じくルーキーのLouis Deletrazにも大差をつけられており、エマーソンから3代に渡るF1進出は困難な道のりでしょう。

またこのレベルのシリーズでたった1回しか表彰台に上がれなかった金丸悠 (RP Motorsport) は、シングルシーターはもう厳しいかもしれません。移籍がほぼ決定していたArdenが撤退してしまい、急遽別チームからの参戦になった点を差し引いても、チームメイトのRoy Nissanyに対して100点近い差というのは受け入れ難いものです。そろそろハコへの転向も考えた方が良いのではないでしょうか?

 

激戦のユーロカップはベテラン勢が上位独占

2年前まではFV8 3.5の下部カテゴリーだったFR2.0 Eurocupは、一時期FIA F4に侵食されてエントリーが減少しましたが、FIA F3とF4のレベル差を埋めるシリーズとして盛り返してきました。その競技レベルはクルマのスペックで上回るFV8 3.5やEuroformula Openを凌駕します。

昨年はLando NorrisがルーキーにしてEurocupとNEC (Northern European Cup) の両シリーズをダブル制覇しましたが、今シーズンはSacha Fenestraz (Josef Kaufmann Racing)、Robert Shwartzman、Will Palmer、Max Defourny (いずれもR-ace GP) といった参戦2年目以上の”ベテラン”が上位を占めました。

チャンピオンは7勝を挙げたFenestraz。開幕3ラウンドは未勝利ながら、中盤以降一気に勝利を重ねました。ただ速さ的にはShwartzmanの印象も強く、ポールリカールでの優勝→失格を含む終盤の低迷がなければ、タイトルの行方は変わっていたかもしれません。シーズン終了後には、フェラーリのジュニアドライバーにも選ばれ前途有望ですね。

昨年、圧倒的強さでフランスF4を制したYifei Ye (Josef Kaufmann Racing) やレッドブルジュニアのDan Ticktum (Arden)、Richard Verschoor (MP Motorsport) といったルーキー勢は予想外の苦戦を強いられ、優勝はTicktumの1勝のみに止まりました。マカオウイナーのTicktumですらランキング7位に終わったという事実が、シリーズのレベルの高さを物語っています。Ticktumは来季FIA F3にステップアップしますが、YeとVerschoorは2年目の来季に注目です。

チームではR-ace GPが初のチームタイトルを獲得しました。ARTとの提携は終了したようですが、Josef Kaufmann RacingやTech1といった名門相手に、トップ4に3人を送り込む圧倒的強さ。かつてはいかにも中堅チームという趣でしたが、近年急速にチーム力を上げてきましたね。

 

ニュージーランドの次代を担うアームストロング

ドイツADAC F4はMarcus Armstrong (Prema)、Felipe Drugovich (Van Amersfoort Racing) との三つ巴の争いを制し、Jüri Vips (Prema) がチャンピオンに輝きました。ただ優勝は僅か2回、PP&FLは0と内容的には不満の残るもの。逆にDrugovichは優勝は7回と他を圧倒したものの、6回ものリタイア&無得点が響きタイトルを逃しました。

フェラーリジュニアのArmstrongはドイツシリーズこそ僅か4.5点差でVipsに敗れたものの、並行参戦したイタリアF4ではルーキーながら見事チャンピオンに。シングルシーター実質フルシーズン1年目(昨年は16歳の誕生日を待ってFルノーにスポット参戦)でのこの成績は将来を嘱望されるに十分なものです。フェラーリの原石、デニス・フルム以来のニュージーランド人F1チャンピオン候補として、今後注目すべき若手ドライバーの一人です。

Marcus Armstrong

Marcus Armstrong (Photo:Formula Scout)

スペインを中心に行われるEuroformula Openでは、Harrison Scott (RP Motorsport) がシリーズ新記録となる14戦12勝の圧倒的強さでチャンピオン獲得。このシリーズはFIA F3のエントリーが最大4台に制限されたことでクルマが余ったCarlinや、同F3を撤退したFortecといった名門チームが加わり、意外な盛況を見せています。ただこのシリーズの問題点は過去のチャンピオンが上のカテゴリーでなかなか活躍できないこと。昨年のチャンピオンであるLeonard Pulciniも今季GP3では開幕戦の2位以外、入賞ゼロという結果に終わっています。Scottはそんなネガティブな前例を覆せるでしょうか?

その他、昨年からBRDCの運営で復活した新生英国F3はEnaam Ahmed (Carlin) 、英国F4はJamie Caroline (Carlin)、SMP (North European Zone=北欧)&スペインF4はChristian Lundgaard (MP Motorsport) がいずれも大差でチャンピオンに輝きました。18年はFルノーやFIA F3などで彼らの名前を見かけることになるでしょう。

 

おまけ:期待に応えた宮田&笹原

最後に日本のFIA F4を少々。

今シーズン、周囲から「勝って当然」と見られていたのが、前年のチャンピオンで全日本F3と並行参戦した宮田莉朋 (TOM’S Spirit) と、Fルノー2.0とイタリアF4で優勝経験のある笹原右京 (HFDP) の二人。いずれもそんなプレッシャーを物ともせず、見事チャンピオン&2位に輝いたのは実に立派でした。

笹原くんに関しては「Fルノーで3年も走ってたんだから」とか「FIA F3すら経験してるんだから」などと宣うバカも居たようですが、フォーミュラカーで国内のコースを走るのが初めてという意味では、過去2年Super Formulaに参戦したストッフェル・ファンドーンやピエール・ガスリーと状況は同じ。そんな中で最終戦まで選手権をリードしたのは見事でした。ただ3勝&PP1回という数字には不満が残るのも事実。決勝での走りはある程度、納得できるものでしたが、予選ではもう少し速さを見せて欲しかったですね。それでも初めての国内レースということを考えれば十分及第点と言っていいでしょう。

個人的にはF3で目立った成績を残せていない大津弘樹、坂口晴南より彼をFIA F3あたりに乗せてみたいですが、これまでのホンダのやり方からすると、セオリー通り全日本F3なんでしょうねぇ。。。。。

一方、ドライバーのコメントで耳にする、上のカテゴリーより下のカテゴリーに合わせる方が難しいという話。宮田くんが序盤、思いのほか苦しんだのも、ダウンフォースのあるF3からF4へ上手く走り方をアジャストできなかった部分があるのでしょうか? 実際、全日本F3でセンセーショナルな速さを見せた平川亮も、同年のFCJではタイトルを逃していましたよね。そんな状況下でシーズン後半、よく巻き返して2連覇を達成したと思います。

個人的に面白そうだと思ったのは、角田裕毅 (HFDP) くん。まだまだ荒削りなところはありますが、宮田や笹原相手に3勝&PP4回を記録したのは驚くべき結果でした。JAF-F4でも東日本シリーズを6戦5勝(全てポールトゥウィン)、日本一決定戦も圧倒的強さで制するなど、その童顔とは裏腹に今後が非常に楽しみなドライバーです。

Yuki Tsunoda

Yuki Tsunoda (Photo:AUTOSPORT WEB)

 

 

最後に個人的な2017年欧州ジュニアカテゴリーのトップ20を。

  1. Charles Leclerc (MON : FIA-F2 1st)
  2. Lando Norris (GBR : FIA-F3 1st, Macau 2nd)
  3. Joel Eriksson (SWE : FIA-F3 2nd)
  4. George Russell (GBR : GP3 1st)
  5. Oliver Rowland (GBR : FIA-F2 3rd)
  6. Callum Ilott (GBR : FIA-F3 4th)
  7. Maximilian Gunther (DEU : FIA-F3 3rd)
  8. 福住仁嶺 (JPN : GP3 3rd)
  9. Marcus Armstrong (NZL : ADAC F4 2nd, Italian F4 1st)
  10. Artem Markelov (RUS : FIA-F2 2nd)
  11. Nyck de Vries (NED : FIA-F2 7th)
  12. Luca Ghiotto (ITA : FIA-F2 4th)
  13. Jack Aitken (GBR : GP3 2nd)
  14. Robert Shwartzman (RUS : Eurocup 3rd)
  15. Sacha Fenestraz (FRA : Eurocup 1st)
  16. Nicolas Latifi (CAN : FIA-F2 5th)
  17. Giuliano Alesi (FRA : GP3 5th)
  18. Dan Ticktum (GBR : Eurocup 7th, Macau 1st)
  19. Jake Hughes (GBR : FIA-F3 5th)
  20. Pietro Fittipaldi (BRA : Formula V8 3.5 1st)