2017シーズンレビュー(2) FIA F3

 

Lando Norris won the FIA Formula3 European Championship 2017 with Carlin

Lando Norris and Carlin team (Photo:FIA F3)

前回のFIA F2に続いて、今回はFIA F3を振り返ります。

MuckeやT-Sportがシリーズから撤退し、僅か5チームになってしまった今季のFIA F3でしたが、そのレース内容は昨年を上回る充実したものでした。

 

トップ4人によるハイレベルなタイトル争い

今シーズンはルーキーのLando Norris (Carlin)、2年目のJoel Eriksson (Motopark)、3年目のMaximilian GuntherとCallum Ilott (いずれもPrema) が”トップ4”を形成。彼らとそれ以外にくっきりクラスが分かれました。1対1や三つ巴の争いはしばしば見られますが、四つ巴はかなり珍しく、しかも内容もハイレベルで見応えある戦いでした。昨年がランス・ストロールの一人勝ち&全体的に競技レベルの低下が見られただけに、余計にそう感じたのかもしれませんが。

そんな激戦を制したのはルーキーのNorris。Euro Series時代も含めPremaの連覇を6で止めただけでなく、Carlinにもユーロでは初のタイトルをもたらしました。シーズン最多の9勝は14年マックス・フェルスタッペンの10勝には及ばないものの、当時より1ラウンド少ないことを考えれば互角の数字。シーズン前半はラウンド毎に首位が入れ替わる一進一退の攻防が続きましたが、後半初戦のスパから9戦で6勝をマークし、一気にライバルを突き放しました。

彼については別の機会に改めて触れたいと思いますが、僅かな隙を見逃さずズバっと抜いて行くオーバーテイクの鋭さは、F3時代のフェルスタッペンを彷彿させるものがあります。逆に弱点は何度も失敗したスタート。昨年のFルノー時代から見られたミスですが、このレベルではリカバリーできても、F1では致命傷になりかねず、早急な改善が必要です。

 

成熟のエリクソン&ギュンター、発展途上のアイロット

2位のErikssonはNorrisに次ぐ7勝をマーク。Motoparkの躍進に大きく貢献しました。PPやFLこそ多くはないものの、全30戦中リタイア1回、入賞27回の安定感が光ります。Norrisが”動”とすればErikssonは”静”。派手なアクションはありませんが、確実に結果を残すタイプのドライバーですね。既に来季はBMWからDTMのレギュラー昇格が決まっており、第2のMarco Wittmannになれる可能性も十分ありそうです。

Joel Eriksson at Redbullring podium

Nikita Mazepin (2nd), Joel Eriksson (1st), 牧野任祐 (3rd) (Photo:FIA F3)

3位のGuntherはランキングこそ昨年より一つ下げたものの、内容的にははるかに充実していました。昨年よりPPもFLも減った一方、リタイアも4回→1回に減り、優勝・表彰台・入賞はいずれも増加。昨年はストロールの独走を許した戦犯として、かなり厳しい評価をしましたが、今シーズンは大きく成長した1年でした。こちらもメルセデスのサポートを受けており、ファクトリードライバーへの昇格やDTMへのスポット参戦(Formula Eとのバッティングのため)が噂されています。

4位のIlottは先日のマカオGPレビューでも触れましたが、純粋な速さではNorrisに匹敵するにも関わらず、つまらないミスが多く安定感がありません。今シーズンも6勝を挙げたほか、PPとFLの回数ではNorrisを上回っているにも関わらず、表彰台はNorrisの約半分しかなく、真っ先にタイトル争いから脱落する結果に。競り合いの弱さは、カートからいきなりFIA F3にステップアップしたため、入門フォーミュラで走り込んでいない影響もあるのでしょうか? フェラーリのFDAに加わったことで、速さが結果に結びつくようになるのか注目です。

 

予想外の活躍だったカーリン勢、F4上がりのルーキーは苦戦

“トップ4”にも絡んでくるかと思われたJake Hughes (Hitech GP) ですが、チームの不調もあって1勝止まり。それでも3人のチームメイトを圧倒するリザルトでランキング5位を獲得し、その実力を示しました。

個人的に全く予想外だったのがJehan DaruvalaとFerdinand Habsburg(いずれもCarlin)のルーキー二人。それぞれFルノーEurocup (9位) とEuroformula Open (2位) 上がりだけに苦戦が予想されたのですが、いずれも1勝を挙げランキングもそれぞれ6位、7位を獲得。経験に勝るPrema勢やHitech勢を上回りました。CarlinはてっきりNorris頼みかとばかり思っていましたが、Daruvalaは全戦完走、Habsburgはマカオでの大活躍と、予想を大きく上回る活躍でしたね。

逆に2年目のGuan Yu Zhou (Prema) やRalf Aron (Hitech GP)、Harrison Newey, Pedro Piquet (いずれもVAR) といったドライバーは低迷しました。Zhouは最強Premaのシートを得たにも関わらず、5度の3位が最高でGunther&Ilottには全く及ばず。Aronも3位2回に止まり、Hughesとの差を見せつけられました。

昨年のドイツADAC F4で1-2を占めたJoey Mawson (VAR) とMick Schumacher (Prema) も苦戦の1年に。いずれも表彰台は3位1度のみで、ランキングではそれぞれ13位、12位に終わりました。

ADAC F4は各国のFIA-F4の中でも参加台数、競技レベルとも最高峰に位置するシリーズ。そのチャンピオンと2位ですらこのポジションに留まるという事実が、今シーズンのFIA F3のレベルの高さ、またFIA F3とナショナルF4のレベル差を物語っているように思います。

Mick Schumacher got his first podium finish

Mick Schumacher (Photo:Autosport)

個人的に気になったのはDavid Beckmannの不振です。15年にADAC F4で5位の成績を収め、昨年FIA F3にステップアップ。年齢制限により開幕2ラウンドを欠場したものの、2度の表彰台やFLを獲得するなど、F4上がり&16歳という年齢で驚く走りを見せました。今シーズンはVan Amersfoort Racingに移籍しトップ10入りは確実かと思われましたが、まさかの大不振に陥り、僅か3ラウンドでチームを離脱。Motoparkへと移籍することに。移籍後は多少成績の向上は見られたものの表彰台はなく、ランキング、ポイントとも昨年を下回る結果に終わりました。とはいえ、まだ17歳。来季は復活して来るでしょうか?

 

チームタイトルはプレマが7連覇達成

チーム別に見るとPremaがドライバーズタイトルこそ逃したものの、チームタイトルでは前人未到の7連覇を達成。ついにASM/ARTが保持していた6連覇 (04〜09年) を超えました。今シーズンもチームの総合力という点では、頭一つ抜けていましたね。

Carlinは昨年、所属ドライバーが成績不振からことごとくシーズン途中で離脱し、一時参戦休止に追い込まれるという悪夢のような1年でしたが、マカオGPでアントニオ・フェリックス・ダ・コスタら実力派を擁し復活の優勝。今シーズンはルーキー3人という体制ながらも、Norrisがチーム初のチャンピオンに輝き、またレギュラー3人がいずれも優勝を記録しました。今年ルーキーで勝利を挙げたのは、このCarlinの3人のみ。やはりいくらチーム力が高くても、それを活かすも殺すもドライバー次第だということが改めてわかりますね。

Motoparkも大躍進の1年に。シリーズではEriksson頼みの状況でしたが、マカオではスポット参戦のDan Ticktumが見事優勝。同じくSergio Sette Camaraもフィニッシュ直前まで優勝を争うなど、一躍今年の主役チームに躍り出ました。Ticktumは来季のレギュラー起用も決定済みで、チーム初のタイトルに期待がかかります。

HItech GPとVARは残念ながら期待外れのシーズンに終わりました。

 

大苦戦の牧野、原因は実力か環境か

昨年GT500で鮮烈なデビューを果たし、日本人F1ドライバー候補として大いに期待された牧野任祐 (Hitech GP) でしたが、まさかのランキング15位に終わりました。ホンダの山本雅史の言う2位以内は無理にしても、個人的にもトップ6、少なくともトップ10は確実だと思っていただけに、誰もが理解に苦しんだことでしょう。

Tadasuke Makino at Redbullring

Tadasuke Makino at Redbullring (Photo:Motorsport.com)

前半の入賞は僅か2度。さらにノリスリンクでは手首を骨折し1ラウンド欠場する羽目にもなりました。終盤のニュルブルクリンク以降、尻上がりに調子を上げ、終盤3ラウンドでは”トップ4”とも互角のレースを展開。9戦で表彰台を含む6度の入賞を記録しましたが、時すでに遅し。最終的にはフル参戦した中では下に3人(ルーキー二人と17歳)しかいないという悲惨な結果に終わりました。

マカオにはMotoparkから参戦しましたが、ここでもF3僅か3戦目のTicktumやSette Camaraといったチームメイトに全く敵わず、9位完走が精一杯と、国内であれだけセンセーショナルだった彼の速さはどこに行ってしまったのでしょうか? それとも元々その程度の才能だったのか?

最近のインタビューで本人は欧州の低い気温と路面温度、低μの路面にアジャストできなかった旨を語っていますが、これをどう受け取ればよいのでしょうか? それらは日本から欧州に挑戦する全ての日本人ドライバーが直面することであり、現在のHitech GPと比較的似た規模にあるマノーから参戦した中嶋一貴や塚越広大が、初年度からトップ10に入ったり、チーム内でトップの成績を収めていることを考えると、牧野は彼らよりレベルが下なのかと思わざるを得ません。それ以前に語っていた全日本とユーロのブレーキの感覚の違い等なら、まだ多少は納得できるのですが……。

来季はFIA F2への昇格が噂されていますが、どのカテゴリーになるにせよ2年続けて低迷するようなら、その時点でF1挑戦は終了でしょう。昨年末とは真逆の意味で、予想を覆すような活躍を期待したいですね。