クラス1世界選手権を夢想する

 

DTM and GT500 at Hockenheim

DTM x GT500 at Hockenheim(Photo:AUTOSPORT WEB

メルセデスのDTM撤退発表により先行きが不安視されていたDTMとSuperGT (SGT) のコラボレーション、いわゆる”クラス1”ですが、それぞれのシリーズ最終戦でお互いの車両がデモランを行うなど、ここに来て危機感がむしろ双方の結束を強めているようにも見えます。結果的にではありますが、F1という”重荷”のため新エンジン移行に消極的だったメルセデスがいなくなることで、LMP1撤退で”身軽”になったアウディと、世界選手権のワークスプログラムを持たないBMWにとっては、むしろ動きやすくなったと言えるのかもしれません。

GTA坂東代表とITRベルガー代表が共同記者会見。「このデモランがコラボを深化」

 

以前、そんなクラス1規定を使った世界選手権をFIAが構想しているという噂が流れました(Class1 could be introduced in WTCC by 2019)。DTM/SGTから見れば”横取り”のような感もありますが(笑)構想自体は大変興味深くもあります。そこで今回はそんなクラス1世界選手権(WTM? ITM? WGT?)を勝手に夢想してみたいと思います。

一応断っておきますが、以下はあくまで各種ニュースや状況を踏まえた上での個人の妄想であって、現段階では事実どころか噂一つないことは留意くださいm(__)m

 

クラス1=新たなFIA GT1に

まず世界選手権化に伴い、クラス1は開店休業状態のFIA-GT1に組み込まれるでしょう。これにより「GT1=クラス1(DTM/SGT)、GT2=GTE(WEC/IMSAなど)、そしてFIA-GT3&GT4」と、FIAによるGTピラミッドが完成します。ツーリングカーにも現在、世界選手権のTC1=WTCCの下に、国内シリーズ向けのTCN1=BTCC、TCN2=TCRという区分がありますし、フォーミュラでも近年、FIAは傘下のピラミッド構築に熱心なので、FIAの規定に組み込まれても何ら不思議ではありません。

次にシリーズの形態ですが、おおよそ次の3つが考えられます。

  1. WTCC、DTMとも現状維持のまま別途新規創設
  2. WTCCをTC1からクラス1に置き換え(DTMは終了)
  3. DTMを発展的解消させて世界選手権化(WTCCは当面継続)

(1)は日独6メーカー以外に現状クラス1参入を表明したメーカーはなく、DTMと世界選手権を両方やるのはメーカーの負担が大き過ぎるため、必然的に消えます。

(2)と(3)に関しては実はプロモーターの違いでしかありません。

先の記事にあったのは(2)のケースですが、ミュニッヒやカンポスといったプライベーターが、アウディやBMWのクラス1車両を走らせることは考えにくく、かと言って独自に車両を購入して参戦を続けるとも思えません。DTM/GT500にとってはクラス1はコスト削減に繋がるかもしれませんが、WTCCにとってはただでさえそれまでより高コストとなったTC1より更なるコスト増となります。結局はDTMのチーム体制がそのままスライドし、現在のWTCCプライベーターはTCRインターやETCCに移行(既に両シリーズに参戦しているチームも多数)することになるでしょう。プロモーターがユーロスポーツイベントである以外、中身はWTCCとは完全に別物になるわけです。

(3)は最もシンプルなケースで、ITRがFIA選手権化を受け入れさえするなら、これが最も可能性が高いシナリオでしょう。この場合WTCCは当面残るとしても、ホンダとボルボが撤退すると、エントリーは10台前後にまで減少し、どのみちシリーズ存続は不可能となりそうです。WTCCにとってはいずれにしても消滅する未来しかないわけで、酷なことではありますが……。

シリーズ開始は19年、あるいは19年のDTMの状況を見た上で20年か21年というところでしょうか。

 

レースフォーマット、開催地など

WTCC/DTMとも距離等の違いはあれど、1ラウンド2レース制のスプリントレースなので、どちらの形態になろうと週末のスケジュールは、土日にそれぞれプラクティスと予選・決勝を行う形になるでしょう。SGTのようなセミ耐久化は、ベースとなる両シリーズのコンセプトを考慮すると可能性は低いと思われます。

タイヤもWTCC/DTM同様に銘柄はともかくワンメイクは継続。FIA選手権はF1はじめ、どのカテゴリーもワンメイク化しているので、SGTのようないわゆる”タイヤ戦争”はまず起こらないでしょうね。

ただ銘柄に関しては一悶着あるかもしれません。現在DTMはハンコック、WTCCはヨコハマのワンメイクですが、DTM側は勝手知るハンコックの継続を望むでしょうし、GT500側は3メーカーともヨコハマユーザーを抱えているので、ヨコハマになる方が好ましいはず。ベースとなるシリーズがどちらになるかにも依りますが、少しでも優位を得ようと綱引きが起こるかもしれません。そうなるとFIAが介入して、大外からピレリという可能性もありそうです。

Hankook DTM tire

Hankook DTM Tire (Photo:TouringCar Times

レース数は年間10ラウンド20戦ほどでしょうか。開催地は欧州5〜6、欧州外4〜5で、DTMベースならドイツのみ年2回開催に。ホッケンハイムは固定で、もう1ヶ所はニュルブルクリンクもしくはノリスリンクあたり。その他の欧州ラウンドはポールリカール、レッドブルリンク、ザンドフールト、スパ、モンツァorムジェロ、ハンガロリンクなどから3〜4ヶ所。欧州外ラウンドでは日本(鈴鹿or富士?)は固定で、メーカーが望む市場である中国と米国。それにロシア、ブラジル、メキシコ、中東などから1〜2ヶ所というところでしょうか。ホッケンハイムと日本が開幕戦と最終戦いずれかに収まるでしょう。

難しいのはウェイトハンデです。WTCC/SGTでは今でも独自の方法でウェイトハンデを課していますが、DTMは今季終盤に撤廃したばかり。来年のレース内容・結果にも依ると思いますが、こればかりはどちらになるか予想がつきません。

 

参加メーカーとエントリー数

では肝心要の参戦メーカーとエントリー台数を見て行きましょう。

エントリーは1メーカーあたり2チーム4台で5〜6メーカー、計20〜24台集まるのが理想ですが、少なくともシリーズ開始当初はそんな綺麗な配分は無理でしょう。日本メーカーは当然SGTがありますし(2シリーズ合わせると10台近くが必要)DTM側は今シーズン1メーカー8台から6台に減ったばかり。それでも6台あれば成立には十分ですが、世界選手権化によるロジスティクスなどの負担増に加えて、NREと同じ直4直噴エンジンの導入も重なるため、維持できるかはギリギリでしょう。

トヨタ・レクサスはWEC撤退もしくは規模縮小なら、その分のリソースをクラス1に回せると思いますが、継続となるとどうか。同じくホンダもWTCCのリソースを回せれば2台は可能でしょうが、F1にリソース集中となると微妙なところ。この2メーカーは上記+GT500を1台削ってようやく3台可能かと思います。

一方ニッサンは現在、世界選手権のファクトリープログラムを持たないため、参戦には予算の増額が必要です。またGT500は現状でも4台しかいないので、これ以上削るのは難しいでしょう。

当然ながら使用するクルマはGT500と同じなので、R&Dはほぼそのまま活かせるのですが、問題は製造とロジスティクスも含めた運営面の負担ですね。日本側はGT500もあるため、どうしても関与が限定されてしまうのは避けられません。

日本側が最低2台出すとして、シリーズ創設当初のエントリーは最小で14、最大で20台程度ということになりそうです。

 

2〜3年後のドライバー布陣を予想してみる

では各メーカーのドライバーの顔触れはどうなるでしょうか?

アウディではマティアス・エクストロムは第一線を退いていると想定し、今季DTMでルーキー初のチャンピオンに輝いたルネ・ラストとマイク・ロッケンフェラーを中心に、GT3でWRTのエース格であるロビン・フラインス、2年続けてルーキーテストに参加しているニック・デ・フリーズ、それにF1でシートを得られていない場合はアントニオ・ジョヴィナッツィ(過去にアウディからDTMスポット参戦の経験あり)あたりを予想します。チームは現在と同じくアプト、フェニックス、ロズベルグ。

Antonio Giovinazzi with Audi RS5 DTM

Antonio Giovinazzi with Audi RS5 DTM(Photo:TouringCars.net

BMWは14/16年チャンピオンのマルコ・ヴィットマンを軸に、トム・ブロンクヴィスト、今季ジュニアドライバーとしてFIA F3で2位となったジョエル・エリクソンが有力。ティモ・グロックやFormula E (FE) の成績次第ではアントニオ・フェリックス・ダ・コスタも可能性があります。あるいはメルセデスからルーカス・アウアーなどの移籍というのもあり得るでしょう。チームはこちらも現状の3チーム。

次に日本勢。トヨタ・レクサスは中嶋一貴&小林可夢偉の名前は当然挙がってきますね。ただ可夢偉は最近FEへの興味も示しており、そちらに参戦している可能性もありそうです。また年齢的には平川亮や坪井翔といった、一世代若いドライバーの起用も考えられますね。外国人ドライバーではヘイッキ・コヴァライネン、ニック・キャシディ、アンドレア・カルダレッリといった現在のGT500ドライバーでしょうか。チームはTMGが独自に運営するか、欧州でRC F GT3の開発を担い、今季はInternational GT Openで走らせているファーンバッハーなどと組む形が考えられます。

Farnbacher Racing Lexus RC F GT3

Farnbacher Racing Lexus RC F GT3(Photo:Farnbacher Racing

ホンダはWTCCから引き続きJASが運営を担うのはほぼ確実でしょう。ドライバーは現在のGT500ドライバーではなく、松下信治or福住仁嶺の若手に。外国人ドライバーではジェンソン・バトン以外に予想は難しいのですが、もし来季以降ピエール・ガスリーに匹敵するドライバー、たとえばチームメイトだったりタイトル争いで互角の勝負を展開していたアレックス・リンやオリバー・ローランドをホンダがSuper Formulaで起用するなら、クラス1にも抜擢されるかもしれません。

ニッサンは現在ブランパンでGT-R GT3を走らせるRJN、あるいはかつてFIA-GTで運営を担ったJRMが有力。ドライバーはヤン・マーデンボローと千代勝正or高星明誠が、年齢的にも経験的にもベストマッチでしょう。

 

新たなマニュファクチャラーの参入は?

当初はDTM/GT500の5メーカーで始まるとして、その後新たなマニュファクチャラーの参入はあるのでしょうか?

以前オートスポーツでは現在WTCC参戦中のボルボを候補に挙げていましたが、ボルボはラディカルなEVシフトを計画しているため、参戦するならFEの方が有力ではないでしょうか。むしろセルジオ・マルキオンネがモータースポーツ復活に熱心なアルファロメオの方が可能性は高いように思えます。アルファと言えば、かつて155でDTM通算38勝を挙げタイトルも獲得した実績がありますし、現代版ITCの復活にはピッタリのブランドではないでしょうか。

Alfa Romeo 155 V6 TI

Alfa Romeo 155 V6 TI(Photo:Wikipedia

その他、シリーズの盛り上がり次第では、GTEを持つフォードやシボレー・コルベットといった米国メーカーが興味を示す可能性もあるでしょうし、WRCの成績次第ではシトロエンがサーキットレースに復帰することも考えられます。逆にポルシェはWEC/FEに続いて、同グループのアウディと競合することは考えづらく、やるとしてもF1の方が可能性は高いでしょうね。

いずれにしてもDTM単独では彼らの新規参入は考えにくく、その点でも世界選手権化はメリットがあると言えそうです。

とは言っても、全て妄想なんですけどね(笑)