驕れるホンダ&マクラーレンの無残な結末

 

タイトルの通り今回は壮大な”ホンダ大批判大会”になりますので、ホンダLOVE♪な方はこの時点で止めることをお勧めします(笑)

 

STRは現状ベストな選択

先日、ホンダはマクラーレンとの提携解消、新たにスクーデリア・トロ・ロッソ (STR) とのパートナー契約を正式に発表しました。個人的にもこれが現状では、最もベターな選択だと思います。

F1の歴史を振り返ってみても、大手マニュファクチャラーが参戦から3年で相対的ポジションの大幅な向上が見られない場合、タイトルを争うレベルにまで到達するケースはまずありません。個人的にはホンダが現在のPU規定下、つまり少なくとも次期エンジン規定に変わるまでの今後3年間は、優勝することはないと思っています(ハズレてくれれば、それに越したことはありませんが)。

そのため、このままマクラーレンとの関係を続けても、さらに3年間グチグチと批判され続けるのは確実であり、さすがのホンダでも(特に役員に)そこまで耐え続ける忍耐力はなかったでしょう。

現在のF1は、中堅チームと言えども400人前後のスタッフを抱え、100億以上の予算を扱う大企業です。STRのジェームス・キーをはじめ、どのチームも優秀なテクニカルディレクターを抱えており、”それなりの”クルマを作れる技術力もあります。中規模チームなら将来的なフルワークス化の可能性も残せますし(ただその場合はフォース・インディアがベストでしょう)、STRの場合は”親チーム”のレッドブルに”昇格”する可能性もある(実際に19年からレッドブルがホンダにスイッチするという噂もありますね)。新たな一歩としては最適なパートナーではないでしょうか。

山本雅史、フランツ・トスト、森山克英(Photo:The Indian Express

 

最初から中堅チームと組むべきだったホンダ

そもそもF1復帰にあたっては、まずSTRのような中堅チームと組むべきだったんです。その意味では3年も無駄にして、ようやくスタートラインに立ったとも言えますね。

個人的にはホンダの復帰発表当時はロータス(現ルノー)を推していましたが、Fインディアこそ少し上にいますけど、その他のチームは概ねランキング6位以下の言わば”Bクラス”。その位置なら、たとえホンダPUの性能が期待ほどでなくともポジション的には大して変わりませんし、批判もマクラーレンほどではなかったでしょう。むしろ外部の雑音に惑わされず、じっくり開発に取り組めるメリットがあったはずです。

”普通の”NAエンジンやターボエンジン、あるいはそれにKERSを組み合わせた程度なら、先行メーカーにこれほど大きく遅れることもなかったでしょうし、マクラーレンと組んでも良かった。しかし内燃エンジンに運動回生だけでなく熱回生まで組み合わせるという、市販車でも未だ研究段階の技術にも関わらず、ろくな準備期間もないままマクラーレンのような英国を代表するチームと組むなどというのは、愚の骨頂としか思えません。

「最初から失敗の予防線を張るような弱腰でF1なんかやるな!」という意見もあるかもしれませんが、そんな根性論で勝てるほどF1は甘い世界ではないですよね。F1に限らず勝つためには周到な準備が必要なのは常識。他の3メーカーは2010年前後からPUの策定に携わり、投入までの開発期間に5年前後かけていたわけで、たかだか2年弱の開発期間で、敵の懐に飛び込んだ結果が今の惨状なんです。

かつて新井康久だったかが(記憶が曖昧ですみません)F1復帰にあたって「他チームとの提携は一切考慮しなかった」と語ったことがあります。つまりルノーがフルワークス復帰にあたって、ワークス系を除く全チームを丁寧に検証した結果、旧ロータスを”買い戻した”のとは対照的に、ホンダはマーケティングを優先してか、マクラーレン・ホンダの復活ありきで進めたわけです。こんな決め方で上手く行くと考える方がおかしい。初期設定から間違っていたんですよ。

ホンダが現在のF1の技術レベルを甘く見ていたのは間違いありません。上層部は決して認めないでしょうが「3期は車体もチーム運営もやって失敗したが、エンジン単体なら参戦初年度からでも上に行ける。たとえ多少遅れてもすぐに追いつける」と高を括っていたんでしょうね。

日本のF1ジャーナリストの皆さん(特に米◯サンや尾◯サン)はマクラーレン首脳陣と英国メディアのホンダ・バッシングの数々にキレてますが(笑)マクラーレンからしてみればトークンも取っ払ってやったのに、向上するどころか逆にポジションが下がってるわけですから、辛辣になるのも理解できるというもの。3年を一つの目処と捉えていたフシもあり、プレシーズンテストが全くダメだった段階で、完全に愛想を尽かしたのでしょう。

 

強者体質が抜けないマクラーレン

ただホンダばかりを責めるわけにも行きません。問題があるのはマクラーレンも同様です。

現在のマクラーレンは80年代のような常勝チームでも、90年代後半のような強豪チームでもない、ただの堕ちた古豪に過ぎません。2008年まではエイドリアン・ニューウェイさんの”遺産”でタイトルを争えましたが、09年に車両規定が大幅に変わって以降は、一度も最速かそれに近いクルマを生み出せたことがありません。更にルイス・ハミルトンという”スペシャル”なドライバーを失った13年には表彰台もゼロ。14年もメルセデスの最強PUを得ながらウィリアムズにすら敵わない有様でした。トップもこの5年でマーティン・ウィットマーシュ→ロン・デニス→ザック・ブラウンと、次々と変わる不安定ぶりです。

Ron Dennis, Zak Brown(Photo:BBC Sport

そんな状態にも関わらずブラウンもエリック・ブーイエも常に上から目線。自分達は未だトップチームだと思い込んでいるのですから、その姿は滑稽ですらあります。スポンサー枠を安売りしないというのも、ブランド価値の維持以前に、そんな変わらぬ強者体質のせいでしょう。

同じく堕ちた古豪であるウィリアムズも当初は強者体質がなかなか抜けませんでしたが、代表がクレアさんに変わった辺りから、現実を受け入れ、もはや強者ではないことを自覚し始めたように思います(だからこそパット・シモンズやパディ・ロウを招聘しチーム立て直しに懸命)。

一方のマクラーレンは、グループ全体の企業規模が大きいからか、首脳陣の態度といい、結果に全く表れていない”水平型組織”への固執といい、強者体質が全く抜けていません。たとえPUをルノーにスイッチしたとしても、レッドブルはおろかワークスルノーにすら敵わないでしょう。一種の大企業病です。

 

サラリーマン組織ではもはや勝てないF1

興味深いのはホンダのモータースポーツ活動の中で結果を残しているMotoGPとインディカーでは、それぞれHRC (Honda Racing Corporation) とHPD (Honda Performance Development) という、ホンダ本体とは独立したレース専門組織がレース活動を担っている点です。なぜ今度は長期間コミットすると宣言までしているのに、F1には同様の組織をつくらないのでしょうか? 

メルセデスはブラックリーのF1チーム本体と、ブリックスワースのメルセデスHPP (High Performance Powertrains) が本社から独立して動いていますし、ルノーはルノー・スポールがモータースポーツ活動全体を担っています。フェラーリに至ってはF1のために市販車を売っています(笑)

またメルセデスのトト・ウォルフをはじめ、ルノーのジェローム・ストール&シリル・アビデブール、他のカテゴリーでもアウディの以前はDr.ヴォルフガング・ウルリッヒ、今はディーター・ガス、BMWのイェンス・マルカルトといった面々は、皆レース活動において本社から独立した権限を与えられています。

対してホンダF1は本社直轄のプロジェクト。長谷川さんはもちろん、モータースポーツ活動を取り仕切る山本雅史にもおそらくそのような権限はないでしょう。PUのカスタマー供給ですらイチイチ本社に持って帰って役員会に諮りそうです。ルノーのアビテブールも「彼らは自分たちでは、何も決められない」と嘆いていたそうですが、現場に権限がないために、F1のスピードに全くついて行けないんですね。

前線基地であるHRD Sakuraにしても、F1が中心とはいえWTCCやSGT/SFなど、ここだけで様々なカテゴリーを扱っています。これも先述のメルセデスHPPがF1のPU開発に特化しているのとは対照的です(DTMやF3エンジンはHWAが担当)。

ちなみにHRDと聞くと”Honda Racing Development”を連想してしまいますが、HRD Sakuraは”Honda Resarch & Development”、つまり本田技術研究所であって、レーシングカーの開発を担っている本田技研工業の一部署に過ぎません。ややこしい名称ですね。

HRD Sakura(Photo:AUTOSPORT WEB

ホンダは「技術者の育成」をF1参戦理由の一つに挙げていましたが、SuperGT (SGT) やF3レベルならともかく、高度に専門化された現代のF1は、もはや頻繁に異動のあるようなサラリーマン組織が通用する世界ではありません。あくまでレースに特化した専門集団でなければ勝負にならなくなっていることに、いつになったら気付くのでしょうか?

 

WTCCでも計画性の無さを露呈

F1だけでなくWTCCでもそんな上層部の無計画ぶりが表れています。

2014年にはF1だけでなくWEC LMP1-H、WTCC、SGT/SFなど多くのカテゴリーでレギュレーションが変更されましたが、WTCCには1年前の13年に参戦開始(12年終盤にプレ参戦)という、全く不可解なタイミングでした。たった1年しか使えないクルマの開発に多くの時間を費やした結果、規定変更への対応が遅れ、ドンピシャのタイミング (14年) で参戦してきたシトロエンに惨敗。ものの見事に勝ち逃げを許したわけです。ポルシェがWECに参戦を始めたのも規定変更年の14年。トヨタがWRCに復帰したのもやはり規定変更年の今年2017年。ホンダの無計画っぷりが際立ちます。

他方SGTでは、NSXのミッドシップ&ハイブリッドをゴリ押しした結果、こちらも惨敗。Super Formulaでも現行のSF14+NREでは一度もタイトルを獲れず、上位は常にトヨタ勢が占める結果となっています。どれもこれも見事なまでの負けっぷりですね。

 

恥知らずな役員のコメント

「レースのホンダ」と言われたのも今は昔。現在では寧ろトヨタやニッサンの方がモータースポーツに積極的な印象を受けます(トヨタは今”あの社長”ですからね(笑)) 今のホンダには昔のトヨタのような”エリート臭””官僚臭”がして、かつてのようなレーシング・スピリットなど感じません。

腹立たしいのは先日のFIA会見で、役員が「本田宗一郎」「F1はDNA」「ホンダ・スピリット」といったワードを発していたことです。宗一郎さんの名前を出して自己弁護するなんて、宗一郎さんに失礼でしょう。たかがパートナー変更でフェラーリが「エンツォ・フェラーリの精神が〜」などと言いますか? 他のメーカーが成績不振に陥ったとして、わざわざ創業者の名前を出しますか? この役員たちは宗一郎さんの名前でも出しておけば、ファンもマスコミも納得するだろうとでも思っているのでしょうか?

また「F1はDNA」なんて、何度も参戦と撤退を繰り返してきた企業がよく言いますね。そういう言葉はフェラーリはもちろん、メルセデスのように20年以上休まず続けたり、ルノーのように短期間の不在はありながらも、実質40年間参戦し続けてきた企業こそが言えるのです。

「ホンダ・スピリット」にしても、50〜60年代のマン島TTやF1に挑戦した技術者、F1がやりたくて上司に内緒で勝手にF1エンジンを造り、第2期を始めるきっかけを作ったエンジン技術者。第2期でエンジンばかりが持ち上げられたことに対し「何クソ!」と独自にF1マシンを造ってしまった車体屋さんのような行動をこそ言うのであって、”エリート官僚”に軽々しく言って欲しくはないですね。

 

 

今やロボットや飛行機の方がよほどホンダらしさを感じます。モータースポーツに対する上層部の意識が変わらない限り、過去の栄光を取り戻すことは不可能でしょう。

 

ちなみに私は免許を取得してからというもの、約20年一貫してホンダ車ユーザーです。