F3のワンメイク化を考える

 

FIAが何をトチ狂ったのか、F3のワンメイク化を検討しているようです (F3 could become one-make formula from 2020)

記事によると、F3が次期車両に変更される2020年を目処に、エンジンも含めた”フルワンメイク化”を目論んでいるとのこと。これは約70年にも渡ってマルチメイクで争われてきたF3のDNAを根底から覆すものです。

確かに21世紀に入り、シャシーは事実上ダッラーラのワンメイクではあります。それでも一時期ではありますが、フランスのMygaleや、ロシアのArtLine Engineeringといった企業が、ダッラーラという”巨人”に挑戦しました。

Mygale M-08F3 (Photo:Mygale Cars)

またエンジンに関しても、年によって特定のエンジンが若干優位と思われることはあるにせよ、チャンピオンシップを左右するほどの性能差はなく、均衡は保たれています。それは世界的にも珍しい、5つのエンジンメーカーが参加する今年の全日本F3でも同様です。

噂されるFIA F3とGP3の合併に絡んでの話なのでしょうが、まさか今更ワンメイクの話が出てくるとは驚く以外にありません。

 

DTMのサポートシリーズとして始まったユーロF3

現在のFIA F3 (FIA Formula3 European Championship) の前身、ユーロF3 (F3 Euro Series) は、2003年にフランスとドイツのF3が合併して発足。現在まで一貫してDTMのサポートイベントとして開催されています。DTMとユーロF3との関係は非常に深く、シリーズの運営&プロモーターをDTMと同じくITRが担うほか、エンジンもDTMの参戦メーカー(メルセデス/HWA、オペル/Spiess (〜06)、VWアウディ/Spiess (07〜))が供給することで、シリーズが成り立ってきました。

またドライバーに関しても、ユーロF3はGP2へのステップアップカテゴリーという以外に、DTMへの人材供給源としての役割も担っており、Pascal Wehlein & Esteban Oconの現役F1ドライバーをはじめ、Jamie Green, Bruno Spengler, Paul di Resta, Edoardo Mortara, Marco Wittmann, Daniel Juncadella, Tom Blonqvist, Lucas Auer, Felix Rosenqvistなど、これまで数多くのドライバーがユーロF3からDTMにステップアップを果たしています。

チームに目を移しても、ASM/ARTやPrema, Muckeとメルセデス、Carlin, MotoparkとVWは、いずれも強固な関係を築いており、今更他のメーカーなど、そう簡単に受け入れられるものではないでしょう。

このような背景があるため、現FIA F3のワンメイク化は考え難く、実際Trevor Carlinをはじめ、どのチームもDTMとの関係維持を望んでいます。

また新たにITRの代表に就任したゲルハルト・ベルガーさんは、F1とDTMで開催ラウンドを分担する案のほか、FIAがワンメイクを強行する場合は、Euro Seriesの復活も考慮に入れているようです(DTM’s Berger keen to share F3 races with F1)

それでもFIAがワンメイク化を望む場合は、現在のGP3をそのまま新FIA F3に改称し、ダッラーラ+メカクロームまたはAERのワンメイクにするというのが、最も現実的な方法でしょう。ただその場合、現FIA F3は先述の通りユーロF3として継続が予想されるため、合併という形によるチームの合流は不可能でしょうし、マカオをどうするかという問題が残ることになります。

 

全日本の取るべき道は?

一方、全日本はシャシーはともかく、エンジンのワンメイク化はユーロ以上に受け入れ難いでしょう。トムスとトヨタはもちろん、ホンダ系チームとホンダ(無限)との繋がりは非常に長く、戸田やスリーボンドは独自のエンジンに拘りを見せています。FIAの会議に出席した全日本の代表者も、日本はエンジン・コンペティションの伝統が根強いため、ワンメイク化はシリーズの存続にも関わると、その場で警告しています。

Threebond Racing with Drago (Photo:fmotor)

FIAがワンメイクを強行した場合、全日本はユーロ同様に現行規定のまま存続する可能性が高いでしょう。ただやはりここでもマカオという問題が発生します。全日本チームにとっては、マカオは唯一の国際レースであり、その重要性はユーロの各チーム以上でしょう。FIAの利益を優先した”愚行”によって、全日本にとっては難しい選択を迫られることになります(思えば現在のエンジン規定導入時にも、期限にちゃんと間に合わせた全日本が、1年遅れたユーロに合わせて、マカオでは旧式への換装を迫られるという理不尽な目に遭いましたね、、、、)

一つ突拍子もないアイデアとしては、F3という規格自体を止めて、米インディライツのようにSuper Formulaの下位カテゴリーになるという道もあります。名称はSF2、あるいはSF Lightとかですかね。まぁ可能性は0.1%もないでしょうが(笑)

 

なぜ今になってワンメイクなのか?

F3の衰退に危機感を覚えたFIAが、部内にシングルシーター・コミッションを設立してからというもの、FIA F3の復権、FIA-F4の創設、そしてGP2のFIA F2への改称と、乱立するジュニア・フォーミュラの整理、ピラミッドのシンプル化を次々と推し進めてきました。GP3消滅とFIA F3のF1プログラムへの組み込みで、その目的はほぼ完成と言えます。

にも関わらずなぜ今、F3をワンメイクにする必要があるのでしょうか? エントリーの減少はF3に限った問題ではなく、むしろGP3との競合で参加者を食い合っているのが最大の原因。参戦コストが殊更高騰しているわけでもありません。シリーズの整理は必須としても、2000年にも2010年にも議題に上がらなかったワンメイクが、なぜ今更出てくるのでしょうか?

 

F1を除くあらゆるフォーミュラ・レースがワンメイク化される中、F3は今やF1以外でシャシー、エンジン共にマルチメイクが残された唯一のカテゴリーです。コンストラクターにとってはまさに”最後の楽園”。このまま残してもFIAには何の損もないはずなのですが。。。。