2017ル・マン雑感

 

今更ながら、ル・マンの雑感をば。

 

LMP1:ドイツ勢の天下はいつまで続く?

今年もル・マンは日本勢に冷たかったですね……。クルマは91年のマツダ、チームではマツダと04年のTeam GOH、ドライバーとしては95年の関谷さんと04年の荒聖治。自動車大国ながら、ル・マンで総合優勝を達成した日本勢はこれだけです。トヨタが勝てばいずれも更新することになるのですが……。

「ル・マンで勝つには3台が鉄則」(確か2台は機械的トラブルとクラッシュ対策だったかな?)と言われていますが、今年は3台のトヨタが2台のポルシェに敗れるという、極めて珍しいケースでした。実際この10年、VWディーゼルゲートの影響で全メーカーが2台体制だった16年を除き、常に3台体制のチームが勝ってきたんですよね。そんなこともあり、トヨタが3台目投入を発表した際には、さすがにそろそろ勝てるんじゃないかと思ったのですが、、、。

ただ最初に脱落したと思われた#2 ポルシェが最終的に勝つというのもまた、ル・マン、耐久レースの醍醐味ですよね。優勝したブレンドン・ハートレーもレース後に語っていましたが、あと5分、修復時間が長ければ、残り約1時間での逆転は叶わなかったかもしれません (Hartley says Le Mans win owed to Porsche mechanics ) またマーク・ウェバーはあと1年続けていれば……とも思ってしまいます。

今年はLMP1-Hの全車にトラブルが起こったわけですが、来年以降も4〜5台のエントリーに留まるようだと、LMP1-Lへの新規参入を表明しているジネッタ、SMP/ダッラーラ、ペリンといったプライベーターが勝つ可能性もあるかもしれません。

それにしてもル・マンはドイツが好きですね。特にこの20年間ではドイツ車が実に18勝(ポルシェ4勝、BMW 1勝、アウディ13勝。ドイツ勢以外ではベントレーとプジョーが1勝ずつ)、チームでも16勝という圧倒的な戦績を誇っています。ドイツ勢の天下は一体いつまで続くのでしょうか?

 

LMP2:大番狂わせまであと一歩

Jackie Chan DC Racingが、セカンドクラスの総合優勝という歴史的快挙(珍事?)まであと一歩まで迫った要因は、LMP1の台数減少(Lも含めて昨年比3台減)とLMP2の新シャシー&新エンジン導入によるタイムアップにあります。RebellionがLMP1-Lに残留していれば、彼らが勝っていたかもしれないですし、LMP2車両が昨年型のままなら、もっと早い段階で#2 ポルシェに交わされていたはずです。

優勝したJackie Chan DC Racingは、オーナーのジャッキー・チェンばかりに注目が集まりますが、そのオペレーションを担っているのは、昨年G-Driveを運営していた英国のJOTA Sportです。自チームとしても14年のル・マンLMP2クラスを制した強豪ですが、現在は他チームのオペレーションを担う方針にシフトしており、見事2度目のクラス優勝を達成しました。しかもクラス2位だったRebellionの失格により、クラス1-2のおまけつきです。

Jackie Chan DC Racing Oreca07 Gibson (Photo:SNAPLAP)

逆に本命と目されていた#26 G-Driveと#36 Signatech Alpineは不本意な結果に終わりました。特にG-DriveはRoman Rusinovの凡ミスによって早々にリタイアを喫したため、注目のAlex Lynnが全く走れなかったのが残念です。

日本人で唯一このクラスに参戦した平川亮は、チームメイトがいずれもシルバーということもあり、WECレギュラー勢には全く太刀打ちできませんでした。G-Drive (オペレーションはTDS Racing) の3台目という立場もあり、優先度・サポート体制も他の2台に較べ薄かったのではないでしょうか?

一方でマシンに目を移すと、オレカ07が予選で上位12台を独占。他社トップのダッラーラでもクラストップから3〜4秒差という大差が付きました。昨年までのシャシー選択に制限がなかった状況から、コンストラクター4社に限定されたにも関わらず、逆にタイム差(格差)は広がるという、なんとも皮肉な結果です。採用チーム数とその技術レベル、それによるデータ量の違いなども影響しているのでしょうか?

それにしてもシャシーが約40万ドルのコストキャップでありながら、ワークスLMP1-H(予算約100〜200億)の約10秒落ち&最高速では上回るとは……。LMP1ハイブリッドのハイコストぶりが際立ちますね。。。。

 

GTE:永遠に揉めるBoP

LMP1以上にメーカー対決が熾烈なGTE-Pro。いずれもプライベーター・ワークスとはいえ、WECレギュラーのフェラーリ、アストンマーチン、ポルシェ、フォードに、ル・マンではコルベットが加わる上、更に来年からはBMWまで加わります。ランボルギーニも検討中との噂があり、ハイコスト過ぎるLMP1とは対照的に活況を呈しています。

一方でこのカテゴリーで常に議論になるのがBoP。特にフォード陣営からは、約10年前のアストンマーチンがル・マンの基準車両であることに不満の声が高まっています。(Bourdais warns against dumbing down GTE for Aston Martin)  結果的に今年のル・マンを制したのも、そんな”古い”アストンマーチンだったので尚更でしょう。

逆にコルベットなんかは「BoPがある以上、最速のクルマを追求しても意味がない。あくまでドライバーが扱いやすく、セットアップの変更に素直に反応するクルマに仕上げる」という方針を貫いており、各社のアプローチの違いも面白いところです。

遅いクルマに合わせて、速いクルマを遅くするというBoPの特性上、不平不満が出るのは致し方ないところ。それによって今年も最終ラップまでバトルが続く熱戦が展開されたわけですから、少なくとも見る方にとっては有益な方法であるのは間違いないでしょう。

 

日本勢:実質2人はあまりに寂しい

今年のル・マンに参戦した日本人ドライバーは、トヨタの3人を含め計6人。平川は実質トヨタから”派遣”されたような形なので、自ら交渉したりチームからのオファーによって参加したのは、クリアウォーターの二人のみということになります。

Clearwater Racing Ferrari 488 GTE (Photo:LAT IMAGES)

LMP1-HとGTEProはマニュファクチャラーによるカテゴリーなので、日本のメーカーが参戦すれば、自ずと何人か日本のファクトリードライバーも付いてきます。そのため存在感のバロメーターとして注目すべきはLMP1-L、LMP2、GTEAmなのですが、そこにたった2人しかいないというのは、なんとも残念な状況です。

メーカーからの抜擢以外でル・マンに出場するには、欧州のチームとコネクションを持つか、澤圭太のようにAsian Le Mans Seriesでタイトルを獲るしかありません。しかし日本人ドライバー(とマネージャー)はその点が非常に弱い。ジェームス・ロシターがWECやFormula Eのチームから引っ張りだこなのは、彼がそれだけのコネクションを持っているからですが、そんな日本人ドライバーが他にいるでしょうか?(小林可夢偉くらい?) 本気でル・マンを望むならメーカーばかりに頼らず、今でも独自に道を切り拓いている中野信治を見習ってほしいです(個人的に中野選手には”平成の寺田陽二郎”になってほしかったり^^;)

いつまでもメーカーに頼りっぱなしでは、ル・マンから日本のメーカーがいなくなるのと同時に、日本人ドライバーも不在という事態になりかねません。そんな懸念を吹き飛ばしてくれるような動きを期待したいです。