ミドルフォーミュラの危機的状況

World Series Formula V8 3.5 (以下F3.5) のプロモーター、Jamie Alguersuari Sr(同名元F1ドライバーの父)さんが、巨額の持参金がなければF1に到達できない現状に、全てのジュニアカテゴリーが影響を受けていると嘆いています。

Original Link: Small FV8 3.5 grid in 2017 a warning to F1 ladder – Alguersuari – FV8 3.5 (Autosport)

 

Jaime Alguersuari Jr (left) & Sr (right) (20minutos.es)

 

Sr曰く、

「Fルノー2.0やFIA F3はまだ良いだろう。FIA F4も程度の差こそあるが、まぁOKだ。しかし(FIA F2やF3.5といった)ビッグフォーミュラは危機的状況にある」

「ドライバーは優れたパフォーマンスや才能によってステップアップして行くべきなんだ。だが今必要なのはカネ、カネ、カネ、またカネだ。フェルスタッペンを除いてね。これは何もF3.5に限った問題ではない。フォーミュラレース全体の問題なんだ」

GP2から”リブランド”したFIA F2に対しても、

「確かに”F2”は素晴らしい名前だ。カネに関係なくF1に昇格できるならね。結局はただの名前だよ」と辛辣です。

またLMPへのステップアップは、適切な判断だと主張しています。

「問題は、彼ら若いドライバーたちをプロフェッショナルとしてどう導くべきかということなんだ。F1? 違う。おそらく現状ではLMP1/2/3だろう。今は最適なソリューションを探しているところだ」

 

前身のFルノー3.5時代に、ロビン・フラインスとオリバー・ローランドをチャンピオンへ導いた名門Fortec MotorsportのチームマネージャーJamie Dyeは「F3.5の将来はクリアだ。きっと再び盛り返す」と、カテゴリーへの信頼を表しています。

「今は転換期なんだ。F3.5はレース自体もクルマも良い。走行時間も多いし、ライバルカテゴリー (FIA F2) と違ってレースの最後までタイヤも保つ。それはコスト的にもドライバーにとっても意味のあることだ」

 

 

減少する一方のミドルフォーミュラのエントリー

彼の発言を「ただの言い訳じゃね?」と斬って捨てるのは簡単ですが(笑)、確かに現状はF3.5だけでなく、どのジュニアカテゴリーにとっても芳しいものではありません。

近年、欧州ではGP2 (現FIA F2) 、GP3、FIA F3 (旧F3 Euro)、Fルノー3.5 (現F3.5) の4つが、主要な”ミドルフォーミュラ”として存在してきました。人によって呼び方・分け方は様々なのですが、ここでは「ミドルフォーミュラ=F1未満F3以上のカテゴリー」と、定義しましょう。このうち出力が500馬力を超えるGP2とF3.5はビッグフォーミュラとも呼ばれます。

Formula V8 3.5 race start at Silverstone 2017 (fr.motorsport.com )

この主要4カテゴリー以外にも、AutoGP、(MSVが運営した) 前FIA F2、British F3、EuroFormula Open (旧European F3 Open) なども開催されています(した)。

これらのカテゴリーの参戦台数を3年毎にまとめると以下のようになります。

 


2011年
主要|GP2:26 , GP3:30 , F3 Euro:11~16 , FR3.5:26  合計93~98
他|Auto GP:13~14 , 前FIA F2:18~24 , British F3:20~28 , F3 Open:21~25  合計72~91
総計165~189

2014年
主要|GP2:26 , GP3:23~27 , FIA F3:20~28 , FR3.5:21~24  合計90~105
他|Auto GP:9~12 , 前FIA F2:消滅 , British F3:6~14 , FE Open:16~23  合計31~49
総計121~154

2017年
主要|GP2:20 , GP3:19 , FIA F3:19 , FR3.5:12  合計70
他|AutoGP:消滅 , British F3:消滅 , FE Open:19  合計19
合計89


 

これを見るとF3がFIA選手権化によって、14年に一時的に増えた以外、どのカテゴリーも年々エントリーが減少しているのがわかります。11年と今年では、主要カテゴリーで約20減、全体ではカテゴリーの減少も伴ってほぼ半減です。ミドルフォーミュラに参戦しているドライバーの数が6年前の約半分しかいないわけですから、深刻度がわかるというものでしょう。

なぜこれほどミドルフォーミュラのエントリーは減少する一方なのでしょうか?

参戦コストの高騰などカテゴリー自体の問題や、世界的に経済状況が芳しくないことなども、もちろん原因の一端なのは間違いないでしょう。ただ根本にはF1の魅力減退があるのではないでしょうか。この場合、ファンから見た魅力ではなく、ドライバー側から見た参加するカテゴリーとしての魅力です。

言うまでもなくGTやツーリングカーなどとは違って、フォーミュラのピラミッドでは、F1が絶対的な頂点として君臨しており、サーキットレースを始める若者は、誰もが多かれ少なかれF1を夢見るものでしょう。

しかし肝心のF1はと言えば、F1チームor自動車メーカーのジュニアプログラムに選ばれるか、二桁億円単位の持参金がなければ、辿り着くことすらできないのが現状です。

もちろん過去にもそういう傾向はありましたが、それでも下部カテゴリーで結果を出し、それなりの資金を集めれば、下位チームなら参戦できる可能性は今よりはるかに高かったでしょう。そこから中堅→トップチームへとステップアップする道もありました。

持参金の額にしても、かつては数億円あれば十分だったのが、パストール・マルドナドが推定30億超とも言われる政府系の支援を持ち込んだあたりから、チームからの要求額が跳ね上がったように思います。今では政府レベルや大富豪の援助がなければ、もはやシート獲得は不可能です。

そんな中で、果たしていずれも持たないドライバーが、F1の可能性などほぼ皆無にも関わらず、数億円も払ってまでミドルフォーミュラ、特にFIA F2やF3.5のようなビッグフォーミュラに乗りたいと思うでしょうか? 単なる無駄遣い、大切な資金をドブに捨てる結果にもなりかねません。

 

そこで最近ではそんなビッグフォーミュラをスルーして、F3やGP3からGT/スポーツカーへ早い段階で転向する例が増加しています。今シーズンだけでもJake Dennis、Matt Parry、Ben Barnicoatといったドライバーが、F3/GP3からGTへ転向しました。さらにはF3すら経験せず、F4やFルノーといった入門フォーミュラからスイッチする例すらどんどん増えています。

もはやF1を目指して無駄に資金を費やすよりは、どんなカテゴリーであれ、プロとして報酬を受けられる方を選ぶ若手ドライバーが多くなっているわけです。堅実・現実的ですよね。

こうなると当然ミドルフォーミュラ、特にF2やF3.5のようなビッグフォーミュラでは、参戦に必要な資金と能力を持ったドライバーを見つけ出すのはどんどん困難になります。CarlinやArdenがF3.5を撤退した理由がまさにそれでした。

そういった意味では、F1の下部カテゴリーでなく、WECの下部カテゴリーという位置付けを模索するF3.5の動きは、あながち間違いではないでしょうね。

ただWECでのHarry TincknellやGustavo Menezesなどの活躍ぶりを見ると、F3の経験があれば十分では?とも思えるのですが、それはまた別の話(^^;)