Formula Eの面白さ

賛否両論あるFormula Eですが、個人的には今最も面白く、注目しているシリーズです。アラン・プロストの「80年代前半のF1みたいだ」というコメントは、まさに言い得て妙だと思いますね。

アレハンドロ・アガグを中心としたオーガナイザーの仕事ぶりは賞賛に値するでしょう。当初は懐疑的な見方もありましたが、失敗したA1GP(”モータースポーツのワールドカップ”を標榜)や、Super League Formula(モータースポーツとサッカーのコラボレーション??)と違って、「EVによるフォーミュラカーレース」「EVの技術発展」というコンセプトが明快だったので、個人的には成功すると確信していました。コンセプトってレースシリーズを開催する上で、実はとても重要なんですね。最近はF1ですら、それがあやふやになっている気がします。

アガグらは、モータースポーツにとっては致命的とも言える「音が小さい」という弱点を逆にメリットとして、全戦を市街地、それも都市の中心部で開催するというアイデアを実現させました。市街地レースと一言で言っても、日本の例を見れば分かるように、実際に開催するのは容易なことではありません。いくらモータースポーツ文化のある国でも、自治体や警察など多方面との交渉が必要になるため、その労力はクローズド・サーキット開催の比ではないでしょう。それを世界規模で成し遂げたのですから、その交渉力は特筆すべきものがあると思います。

パワーが300馬力程度しかないというデメリットも、壁に囲まれた狭いコース設定にすることで、十分迫力を感じられますし、また1周が2〜3kmと短いため、2ndシーズンのようにエントリーが18台しかなくても、あまり少なさを感じません。もしこれが通常のクローズド・サーキットでの開催だったら、なんら面白みのない退屈なレースになっていたでしょうね。

そしてSNSなどインターネットの積極的な活用です。F1は見事に乗り遅れたわけですが、ファンブーストやバーチャルレースをはじめ、その意義はともかく、ネット世代の若年層を引きつけるようなアイデアを次々と実行しています。シーズン3からの新規参入を決めたジャガーも、この点がFormula Eを選んだ最大の理由だと述べていました。この攻めの姿勢がいいですね。

レース自体に関しては、私も当初はエネルギー消費量を抑える我慢のレースになるのかと思っていましたが、実際には至る所でバトル満載の激しいレースになりましたよね。これには参戦ドライバーのレベルの高さが大いに貢献しています。元F1ドライバーから現役のLMP1ドライバー、メーカーのファクトリードライバーにジュニアカテゴリーのトップランカーと、その顔触れはF1に次ぐレベルにあるでしょう。これが血気盛んなF3などの若手ドライバーだったら、あの狭く短いコースでは、クラッシュが頻発して、とてもレースにならないでしょうね。

技術的にはまだまだ発展途上ではありますが、それゆえにプロストの言うように80年代前半のF1のような、管理され過ぎず、且つ混沌とし過ぎず、程よく洗練され程よく雑多としている、その辺のバランスが今は絶妙だと感じます。もしかしたら今が最もその辺のバランスが取れている時期かもしれません。

今後は多くの人が予想するように、コストコントロールがプロモーターの課題になるのは間違いないでしょう。F1を反面教師にして、アガグは予めロードマップを作成し、徐々に慎重に技術の開放を行っていく予定です。2ndシーズンではパワートレイン(モーター&ギヤボックス)の開発が解禁されましたが、それだけでも結構な格差が生まれていました。特にEVのキモであるバッテリーが自由化された際には、それに合わせてパワートレインも高出力、低電力消費、高効率を目指して各マニュファクチャラーがリソースを投入するでしょうから、そこで上手くコストの高騰を防ぎ、コントロールできるか腕の見せ所になりますね。

またそのような場合でも、小規模チームが生き残っていけて、時にはトップ争いにも加われるような状態を維持できるかも注目点だと思います。F1とは別種のトップフォーミュラとして、今後も拡大を続けてほしいですね。